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魔王陛下の勇者召喚!

 どうするべきか困り果てていた魔王ですが、ふと思い出したように手を叩きました。

「あ、そう言えば神祇術士かんなぎじゃなくても法術を使える知り合いに心当たりがあったわ」

「本当に?」

「ああ。まあ、立場上あいつに頼むのはどうかと思うのだが、まあ背に腹は代えられぬしな。仕方がない」

「?」

 立場上というのはどういう意味でしょうか。

 魔女にはさっぱりわかりません。

 そんな魔女にはお構いなしで魔王は通信魔法を起動させました。

「あ、もしもし? オレオレ♪」

「………………」

 どこのオレオレ詐欺だと突っ込みたくなりましたが、賢明にも黙ることを選択する魔女でした。

 この世界における通信魔法とは端末を介さない電話のようなものだと、魔女は認識しています。

 通信コードは電話番号のようなものです。


「――というわけでかなり困っておるのだ。ちょっと助けてくれぬか? は? 黒鍵騎士の耳尻尾を? ……うーむ。少し待て。余の一存で決めると後で怒られてしまうからな。本人に訊いてみる」

「………………」

 黒鍵騎士は嫌な予感に苛まれながら自らの主君を見つめていました。

 これから何を言われるのか、何をさせられるのか、薄々わかっているようです。

「……陛下?」

「黒鍵騎士。ここは黙って触られてくれ。先方はそなたの耳尻尾もふもふ権利を要求しておる」

「………………」

「……なんと。誰かは知らないけど物の価値を分かってるね!」

 黒鍵騎士の耳尻尾の素晴らしさを正しく理解している魔女は目を輝かせてそんなことを言いました。

「魔女殿!」

 追い打ちをかけられてしまった黒鍵騎士は絶望的な表情で振り返ります。

「ま、大事な大事な次世代魔王の為だし、諦めてもふもふされてきなよ」

「うぅ……」

 主君の頼み+次世代魔王の危機とあっては逆らうこともできません。

 自分の耳尻尾を弄ばれる程度で丸く収まるのなら、それは喜んで差し出すべきなのだと自らに言い聞かせます。

「……わ、わか……わかり……ました……」

 心底苦渋に満ちた表情で返事をする黒鍵騎士に、魔王は満足そうに頷きました。

「了承を得たぞ。撫でるなり掴むなり引っ張るなりもふもふするなり好きにしてくれ」

「っ!!」

 煮るなり焼くなり、と言わないだけまだマシかもしれません。

 ……マシだと思う事にしましょう。

「しかし随分いきなりだな。どうしたんだ? 前まで黒鍵騎士の耳尻尾になんて何の関心も示さなかったじゃないか。……なに? ついさっき素晴らしさに目覚めただと? ふむ。そうか。ついにお前もケモノ耳尻尾マニアの仲間入りか。ついでにロリにも目覚めてしまえ。歓迎するぞ」

 魔王は必要なことを伝えてから通信魔法を切りました。

 どさくさ紛れに色々と問題発言をしていた気がしますが、とりあえずスルーしておきましょう。

「ちなみに、相手って誰だったの?」

 魔女が興味本位からそんな質問をします。

 魔王は肩を竦めてからにやりと口元を釣り上げました。

「勇者」

「………………」

 そりゃあ魔王陛下としては立場上頼りづらい相手でしょう。

 しかし勇者がいつの間にケモノ耳尻尾の素晴らしさに目覚めたのか。

 そこが非常に気になるのでした。



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