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デート?

 黒鍵騎士と魔女は月詠の里へと到着しました。

 月詠の里の雰囲気は江戸時代風です。

 まるで京都に来たような気分になりました。

 石畳の大通りには着物の女性や男性が練り歩いています。

 中には先ほど見たような黒い忍装束を着ている人もいました。

「うっわー! すごい! 懐かしい! はらしょー!」

 魔女はおおはしゃぎで店を見て回ります。

「……やはり同じ世界の出身なのですね」

 そんな魔女を見て黒鍵騎士も苦笑してしまいました。

「え?」

「勇者もこの里がお気に入りなのですよ。よく陛下とこの里で飲み明かします」

「あー……確かに勇者にとっては私以上に心惹かれるものがあるかもねー。時代的に」

 ここは勇者がこの世界に落とされる前にいた場所と雰囲気が似ているはずです。魔女でさえ懐かしく思うのですから、勇者にとっては感動もひとしおだったことでしょう。

「魔女殿もこのような場所に住んでいたのですか?」

「んー、勇者のいた時代の方が二百年ほど昔だから色々と街並みは違ってるよ。でも文化遺産の保護とかで当時の街並みを残している場所もあるから、やっぱり懐かしいって気持ちはあるかな。瓦屋根とか畳とか、やっぱり日本人なら癒されるし」

「なるほど」

 黒鍵騎士は納得したように頷きました。

「折角だから着替えようかな。着物を着られる機会なんて滅多にないだろうし」

「では着付けサービスのある店に案内しましょう」

「あ、助かる。着付け出来ないもんねー。忘れてた」

 現代っ子だった魔女には着付けの経験がまったくありません。

 浴衣ぐらいなら着たことがありますが、それもお店の人に着付けを手伝ってもらってようやくです。

「レンタルと購入、どちらにしますか?」

「もちろん購入。せっかくの記念だしね。あ、今度はにゃんこも連れてきてあげようかな。にゃんこに浴衣着せてみたいし」

「ご家族ですか?」

「まあそんなところ。黒鍵騎士と同じく耳尻尾がぷりちーなんだよ~」

「………………」

 セクハラを思い出したのか、黒鍵騎士がそっと身震いしました。

 もちろんにゃんこにも同じ事はしているのですが、にゃんこにとっては大好きなますたぁに構ってもらえて嬉しいのでセクハラだとは感じていません。むしろもっとプリーズみたいな扱いです。


 黒鍵騎士の案内で着物姿になった魔女はうきうき笑顔で大通りを練り歩いています。

 大仰な着物だと動きづらいということで、藍色の紬を着ることになりました。靴もブーツではなく雪駄に交換しています。

 何故か黒鍵騎士も着替えさせられていました。

 男前な浴衣姿です。

 耳と尻尾がふりふりとなって大変プリティーな様相になっています。

「あ、着物代は奢りだから気にしなくていいよ」

「……それはどうも。しかし私まで着替える必要があるとは思えないのですが」

 黒鍵騎士は居心地悪そうに肩を竦めます。

「私が見たかっただけ」

「………………」

 まるでコスプレさせられている気分です。

 魔女にとっては騎士甲冑の方がよっぽどコスプレじみているように思いますが、そこは土地の違い、役割 の違いといったところでしょう。


 魔女と黒鍵騎士のデート(?)はもう少し続きます。



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