実録! 魔王陛下謁見の間!
魔女と黒鍵騎士は魔王城まで転移しました。
「なんか……普通……」
魔王城というくらいですからもっとおどろおどろしいお城を想像していたのですが、至って普通のお城でした。しかも純白のお城です。まるでお姫さまが住んでいるような場所です。魔女はちょっとだけがっかりしました。
「似合わない城に住んでるなぁ、あのおっちゃんも」
「……この城は先代魔王陛下が建てたのもですから」
黒鍵騎士は魔女の失礼な言葉にも気分を害したりせず、淡々と説明を始めるのでした。
純白の魔王城は先代魔王の趣味で建築されたものであり、当代魔王陛下の趣味ではないということ。
先代魔王は女王陛下であり、とにかく少女趣味な方だったということ。
魔王が代替わりしてから新しく城を建てようという意見もありましたが、もったいないからこのままでいいと魔王が承諾したこと。
などなどです。
「お陰で随分と助かりました。先代が湯水のように散財を繰り返していたものですから、当時の財政はかなり苦しかったのですよ。もちろん今現在も決して余裕があるとは言えませんが」
「へえ。色々大変そうだね」
「それはもう」
相槌を打つ魔女の横で黒鍵騎士が黒い剣を取り出しました。
「何するの?」
いきなり剣を抜いた黒鍵騎士に魔女が首を傾げます。
「魔王城の結界を一時的に解除いたします。この黒鍵は魔王城の鍵なのですよ」
黒鍵騎士は黒い剣を魔王城に向けて魔力を籠めました。
すると城を覆っていた結界がゆらぎ、魔女と黒鍵騎士が通れるだけの穴が空きました。
「どうぞ、魔女殿。魔王城へようこそ」
「なるほどね。それで『黒鍵』騎士って呼ばれてるわけか」
魔女は結界を抜けて魔王城へと入りました。
「ええ。私はその名の通り、魔王城の鍵なのですよ」
「その黒鍵は鍵専用? 武器としては使えないの?」
「もちろん武器としても優秀な性能を発揮します。この黒鍵は魔王陛下の側近である『黒鍵騎士』に代々受け継がれる魔剣なのです」
「へえ~」
ちょっと調べてみたいな~、と好奇心がうずうずしましたがさすがに断られると思ったので黙っておきました。
魔王城の廊下を進み、謁見の間へと辿り着きました。
黒鍵騎士が扉を叩きます。
「陛下。魔女殿をお連れしました」
「うむ、入れ」
中からは魔王の声が聞こえてきました。
部下の前だからなのか、以前魔女の家に訪れたときよりも威厳に満ちた声です。
扉がゆっくりと開きます。
中にはきっと玉座に座った魔王が待ち構えているのだと想像していました。
「………………」
「よく来たな、魔女殿。まあこちらに来て座るがよい」
「………………」
中には魔王がいました。
玉座ではなくこたつに入ってみかんを食べていました。
魔王の着ているものは作務衣でした。
作務衣姿でこたつにみかん。
これが当代魔王の姿でした。
こんなのに支配されている魔族の未来が少しだけ心配になる魔女でした。
明日からは一旦、本編を中断してシーズンネタでお送りします。
年末年始の魔女とにゃんことその他もろもろ。
果たしてどうなるのか!?




