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もふもふさせろっ!

 やってきたのは勇者でした。

「にゃんこか。魔女はお出かけ中か?」

「うん。まおうにおとどけものだってゆってた」

 勇者を家の中に入れてあげたにゃんこは、勇者の質問に答えてあげます。

「ごめんね。おちゃをだしてあげたいんだけど、ますたぁからぼくひとりのときはひをつかっちゃだめだっていわれてるんだ」

 にゃんこは申し訳なさそうに勇者を見ました。

「ああ、構わねえよ。気にするな」

 勇者も小さなにゃんこにお茶を出させようという気はまるでなかったので、そんな風に答えます。

「にゃんこは何をしてたんだ?」

「う~。しゅくだい」

「宿題!?」

 勇者はテーブルの上にある魔導書の山を見てしまいました。

「ま、魔女もかなりスパルタだな……こんな小さな子に出す宿題じゃねえだろ、これ」

 勇者は専門書を手に取って嫌そうな顔をしました。

 中には宮廷魔導師が何年もかけてようやく完成させたと言われる名書がありました。

 明らかに子供に読ませるレベルの本ではありません。

「ちがうの~。ぼくがべんきょうしたいってますたぁにいったんだよ。けんはすぐにつよくなれないからまほうでつよくなりたかったんだ。そしたらますたぁがおでかけするときにもおいていかれなくてすむでしょ?」

「……うう。なんであの魔女の使い魔がこんな健気に育ってるんだ? 育ての親の悪影響が全くないってどんな奇跡なんだ?」

 勇者は健気なにゃんこを信じられない表情で見下ろしています。

 魔女の使い魔であり、多少なりとも魔女と精神リンクしているはずなのに、あのえげつない性格が 欠片ほども見えてこないのです。

 奇跡としか言いようがありません。

「でもかいてあるもじがうまくよめなくって……」

「あー……なるほど。文字が読めないわけね……」

 魔導書以前の問題でした。

 それでもほんの少しずつでも内容を理解しようとしている健気なにゃんこを見て、勇者はやれやれと溜め息をつきました。

「よっしゃ。じゃあ俺が教えてやろう」

「え?」

「魔法は専門じゃないけど、文字を教えてやることくらいならできる。俺が隣で内容を読んでやるよ。それなら大丈夫だろ?」

「いいの!?」

「いいとも! ただしもふもふさせろ!」

「にゃ?」

 勇者はにゃんこをぎゅーっと抱き締めてしまいました。

 そして耳を、尻尾を、ぎゅーぎゅーもふもふしました。

 やはりにゃんこの耳と尻尾と愛らしさは世界最強です。

 魔女がにゃんこに甘くなるのも理解できます。

「にゃ~!?」

 マスコット扱いされたにゃんこは勇者の腕の中でちょっとだけ暴れてしまいました。

 もちろん、力の差は歴然ですからにゃんこは勇者にされるがままでしたが。


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