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信じる心を大切に!

「ぜー……ぜー……!」

 致死威力の攻撃百連発を受け切った勇者は息も絶え絶え、武器であるはずの日本刀を杖代わりにしてようやく立っていました。

「おー、すごいすごい。うん。勇者だって信じてあげる。よかったね!」

 魔女は気の抜けた拍手をしながら言いました。

「ひ、人を信じる心って多分、大事だと思うぞ……こんなことをするよりも……ずっと……」

 よろよろと立ち上がりながら勇者は魔女を睨みつけていました。

 簡単に人を信じるのは困りものですが、だからといって疑った挙句にこんなことをされてはたまりません。

 着物もかなり焦げてしまっています。

「どーしてくれるんだよ。これ一張羅なんだぞ」

 ほとんど半裸になってしまっている勇者でした。

「二百年も生きてるくせに服の一枚や二枚で細かい事言わないでほしいなぁ」

 魔女はやれやれとため息をつきながら勇者に近づきました。

 着物にそっと触れてから魔法を使います。

「お? おおっ!?」

 するとあら不思議。

 着物がどんどん直っていくではありませんか。

 あっという間に元通りになりました。

「すげー。さすが魔女」

「とりあえず時間魔法で元に戻しといたから。これで服の件は言いっこなしね」

「……待て。時間回帰を行ったんなら俺の傷も治っているはずじゃないのか?」

「範囲を着物だけに限定しといた」

「なんで!?」

「勇者なら超回復とかあるかなーと思って」

「ねーよそんな便利なもん!」

「しょぼい勇者だね」

「しょぼい言うなっ!」

 出会って早々酷い目に遭いまくりの勇者でした。

 伝説の存在なのにまったく敬ってもらえません。

 敬ってほしいわけではないですが、だからと言ってここまで蔑ろにされるのもとても悲しいものです。


「ところで勇者が何でこんなところにいるの?」

「魔女を訪ねてきたんだ」

「なんで?」

「君は異邦人だろう?」

「そうだけど。多分勇者と同じ世界出身じゃないかな」

「地球世界?」

「そう」

「理由はそこさ。今のところこの世界でたった二人の同郷者。ちょっと興味が出てくるのも当然だろう?」

 その程度の好奇心でここまでひどい目に遭ったのですからちょっぴり後悔していたりもしますが。

 同郷者の話を聞きたい、というのは魔女も同意見だったので、家の中に入れてあげることにしました。


 これが、勇者と魔女の出会いです。

 この二人の出会いが世界の運命を大きく変えることになったりは……もちろんしません。

 ただの世間話です。

 茶飲み友達です。

 身もふたもない関係です。


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