やっぱり魔女は魔女なのです
とてもとても感動的な最終回っぽいセリフが……
「あのね、黒鍵騎士が私と結婚してくれたら帰るのやめてあげるよ♪」
「………………」
しませんでしたね。
この状況でも魔女は魔女でした。
魔女は魔女でしかありませんでした。
大事な場面で何もかもを台無しにしてくれる我らがロリ魔女でした。
「この状況で他に言うことないんですかーっ!」
そして魔女を怒鳴りつける黒鍵騎士です。
お説教を始めてしまいたいぐらい悲しくなる黒鍵騎士でした。
シリアスな気分になっていた自分の葛藤を返せと言いたくなります。
「んー。だってどっちかなんて選べないもん。元の世界に帰りたい、家族に会いたいって気持ちはやっぱりあるし。それと同じぐらい黒鍵騎士ともふらぶしたいって気持ちや、にゃんこと別れたくないって気持ちもあるし」
「もふらぶ言わないでください!」
「自分で選べないなら周りに決めてもらうしかないじゃない?」
「大事なことなんですから自分で選びましょうよ!」
「じゃあ黒鍵騎士の返答を聞いてから帰るかどうかきーめーるー♪」
「それじゃあ結局私に決断させてるようなものじゃないですか!」
「悪い?」
可愛らしく首をかしげる魔女です。
中身はかなり凶悪ですが、少なくともこうしているととても可愛らしいのが複雑なところですね。
「こっけんきし! ますたぁとけっこんしてっ!」
ますたぁの傍にいたいにゃんこが魔女の援軍として黒鍵騎士に攻め込みます。
うるうるした涙目で見上げられて懇願されては、黒鍵騎士も迂闊なことは言えません。
「う……」
黒鍵騎士としては一生モノの問題なので、ここで適当なことを言う訳にはいきません。
「あーあー、迷っている間に異世界のゲートがちっちゃくなってるな~。もうすぐ閉じちゃうかもな~。閉じちゃう前に帰っちゃおうかな~」
「ひ、卑怯でしょう!」
悲鳴を上げる黒鍵騎士ですが、魔女はにやにやしたままです。
シリアスになりたい告白シーンだというのに、もう酷い台無しっぷりです。
これが魔女なりの照れ隠し……であったらまだいろいろな意味で救われるんですけどねぇ。
「で、どうするどうする? 私と結婚しちゃう? 引き留めちゃう?」
黒鍵騎士を見上げながらにやにやと問いかける魔女です。
「………………」
黒鍵騎士はまだ答えることが出来ません。
「……ふーん。そっか。じゃあばいばいだね」
魔女は黒鍵騎士から手を放して異世界ゲートに飛び込もうとしました。
「ますたぁ!」
「魔女殿!」
そしてその手を黒鍵騎士が再びつかみます。
掴んで、魔女を引き寄せました。




