ラグナロクっ!
「くっ! やはり貴様は災厄の魔女だ! ここで何としてでも殺す!」 被害レベルを確認した軍人Aは、忌々しげに歯ぎしりしながら、魔女対策にと持ってきた兵器を向けました。 大きな荷台に載せられたそれは、巨大な大砲のようでした。 魔法部隊が何人も集まって、砲身に魔力を込めます。 どうやら魔法による大砲の一撃で魔女を仕留めるつもりのようです。「う。あれは面倒臭そう」 そして魔女もあの大砲の一撃を受けるとさすがにダメージが大きいと分かっているようです。 もちろんシールドで防げば問題はないのですが、そうすると交代要員のいるクラール王国軍と違い、一人きりである魔女の消耗が問題になります。 魔力そのものはルナソールの蓄積魔力や、この山に蓄えられている循環魔力を利用すればいいのですが、その魔力を利用して魔法を使うには、一度はその魔力を魔女の身体に通す必要があります。 強大な魔力を身体に通すには、もちろんそれに見合った負担を強いられます。 長期戦になれば魔女が不利です。 ここは一気に決めるところでしょう。 魔女は覚悟を決めます。 魔女が保有する中でも最大の破壊力を秘めた魔法を発動させます。 ルナソールの蓄積魔力と、山の循環魔力、その両方を最大に利用して放つ、局地兵器レベルの魔法です。「ラグナロク!」 世界の終わりの名を冠した魔法は、黒い雷となってクラール王国軍に襲い掛かりました。 たった一撃で壊滅状態に追い込みます。 軍人Aも魔法に巻き込んだので、これでクラール王国軍は全滅です。「あー、つかれた」 教育的には非常によろしくない光景が広がっていて、魔女としても気分がげんなりとしてきました。 意図的に暴走させた循環魔力も整えないといけないし、その後の仕事が山積みになっていることを考えると深いため息をつきたくなります。 それ以上に、山積みとなったクラール王国軍の始末も考えなければいけないし……とさらにため息を重ねます。「あー、めんどくさいなー。いっそ拠点を移そうかなー……」 と、魔女がぼやいたときでした。「え?」 暴走させた山の循環魔力がさらなる暴走を引き起こし、あり得ない光景を魔女に見せました。




