軍人Aの復讐っぽいもの
魔女の家は魔力の集まる山の中に建っています。
循環魔力を利用してスカルくんたちを労働力として扱い、今も留守番をさせています。
しかし留守番兼番犬の役割を果たすはずのスカルくんたちは、今や無残に倒されてしまっています。
骨を砕かれ、バラバラにされて地面に転がっています。
「………………」
その有様を見た魔女が怒りに顔を真っ赤にしました。
スカルくんたちを壊されたのもそうですが、何よりも自分のテリトリーで勝手なことをされたという怒りが大きいようです。
山の周りは人間の軍勢に囲まれています。
魔女狩り部隊、といったところでしょうか。
「まっずいなぁ。あの旗はクラール王国軍のものだぞ……」
一緒に戻ってきた勇者が神妙な表情で言いました。
「クラール王国って確か……」
魔女が何かを思い出したようにつぶやきます。
「ああ。いつぞやひどい目に遭わせた軍人Aがいただろう? あいつが国元に帰って魔女が危険人物だってことを報告したんじゃねえか? 紅の魔女が戦力にならないのなら、いっそのこと討伐してしまえ、みたいな」
「………………」
なんとも迷惑な話でした。
勝手に正義を唱えておいて、思い通りにいかなかったら報復、という手段に出る。
魔女としては国ごと滅ぼしてやろうかと本気で考えてしまったぐらいです。
「そこにいるのは分かっているぞ、紅の魔女! 大人しく投降するがよいっ!」
声を張り上げて叫んでいるのは、軍勢の先頭にいるいつぞやの軍人Aでした。
ああいう場所でああいうことを言える立場だということは、それなりに偉いっていうことなのかもしれません。
まあ、軍人Aの身分なんて魔女にとってはどうでもいいことなのですが。
「ふうん……ふふふふふふふふふ……」
魔女が低く笑います。
こういう笑い方をする時は、近づいてはいけないと勇者も、心配して同行してきた黒鍵騎士も理解しています。
「ま、ますたぁ……」
「大丈夫だよ、にゃんこ。すーぐに皆殺……じゃなくてお片付けするからね~♪」
「にゃう……」
猫なで声のますたぁにぶるぶる震えるにゃんこでした。




