やっぱり魔王は強いらしい
「でも愛する人と引き離された悔しさはあるだろうし、一発ぐらいは殴らせてあげたいところだよねぇ」
魔女がにんまりと口元を吊り上げます。
悪戯を考えてうきうきしているときの表情です。
にゃんこはそんな魔女を見てワクワクしています。
腹黒い魔女はドン引きですが、今回はリヒテンダールにかなり肩入れしてしるので、魔女の悪巧みにも大賛成なのです。
「ますたぁどうするの?」
「んふふ~。こーする♪」
魔女は見えないように拘束魔法を発動させました。
不可視の鎖が魔王を縛り上げます。
「ぬっ!?」
魔王は突然自分を拘束した鎖に動きを止められます。
「お、おのれ魔女の仕業か!」
この程度の鎖ならばすぐに脱出できますが、しかし致命的な隙になることは間違いありません。
リヒテンダールが魔王を一発殴るのには十分すぎます。
「くらえーっ!」
「ぐはっ!」
殴りました。
魔王の頬にとてもいい一撃が入りました。
吹き飛ばされる魔王、盛り上がる観客、狂喜する司会、達成感に満ちたリヒテンダール……そしてけたけたと笑う魔女がいます。
にゃんこだけは一発殴れてよかったね~というほがらかさでした。
ピュアブラック久しぶりですね。
「痛い……が、この程度で倒れる余ではないわーっ!」
魔王が魔女の拘束を引きちぎり、そのままリヒテンダールに右回し蹴りを叩きこみました。
「っ!!」
壁まで吹き飛ばされて、更にはめり込んでしまうリヒテンダール。
口から盛大に吐血して、気絶してしまいました。
「ふはははは! 余に対して下剋上など千年早いわーっ!」
高笑いする魔王ですが、誰も盛り上がってくれません。
リヒテンダールに同情する観客たちです。
「ああー! やっぱりこのロリコンを降してくれる勇者は現れないのか! 今回もロリコン腐れ外道魔王の勝利に終わってしまいましたーっ!」
司会が無念そうに呻きます。
「って、誰が腐れ魔王だっ!」
「ぎゃーっ!」
今回は魔王が直接ぶん殴れる位置に司会がいたのがまずかったようです。
魔王は先ほどまでの恨みつらみを込めて司会をぶん殴るのでした。




