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ミミックフラワーをゲットしました

 一時間ほどいじけていた魔女は、ようやく立ち直ってくれました。

 一時間ほどいじけていましたが、一時間もしゃがみこんで『の』の字を描いていたわけではありません。

 根性無しですから五分も経過するとそのまま寝転がってすすり泣いていました。

 いじける時すら手抜きです。

「ますたぁ、ごめんね? もうおんちっていわないから、げんきだして?」

「うー……私ってそんなに音痴なのかなぁ……」

 よろよろと起き上がりながら自嘲します。

「うん。おんちだよ」

「もう言わないって言ったのにーっ!」

「ふみゃああああぁぁっ! ふぉめんにゃふぁいぃぃぃー!」

 舌の根も乾かぬうちに音痴呼ばわりしたにゃんこの両頬を思いっきり引っ張ります。とても痛そうです。

 でも魔女の心はもっと痛そうです。


 涙を拭い鼻水を啜りつつ、トラブルを乗り越えてようやく薬が完成しました。


『氷の涙』

用法:火素の転化。

効用:活性化した火素を氷素へと転化させる。活性化しているときにしか使用できない。


「はい、とりあえず二十回分ね。熱を出す度に一回服用させて」

 魔女は『氷の涙』が入った瓶を渡します。

 目安量はキャップ一杯分です。

 キャップが計量カップ代わりになっています。

「すまないな。ありがたく受け取らせて貰う」

 白銀龍は瓶を受け取って懐にしまいます。

 魔女はまだ鼻を啜りながら頷きました。

「報酬はこれでいいか?」

 白銀龍は紙袋を魔女に手渡します。

「中身は?」

「珍しいものだ。多分、魔女殿が気に入ると思ってな。ああ、開けるときは気を付けてくれ。危険だから」

「危険物!?」

「扱いを間違えなければ大丈夫だ」

 危険物と聞いて怯んだ魔女の代わりに、白銀龍がそっと紙袋を開けてくれました。そのまま紙袋を破いて中身が見えるようにします。

 中からは小さな鉢植えに植えられた奇妙な植物がありました。

 緑の茎と葉っぱはごく普通なのですが、一番上にある丸い実が普通ではありませんでした。

「シャーッ!」

「きゃうっ!?」

 そのまま茎をくねくねさせて牙をがじがじさせています。

「大丈夫だ。襲いかかってきたりはしないぞ」

「ほ、ほんとう?」

「本当だ。アレは肉食ではなく草食だからな。ミミックフラワーという。餌を持たずに指を近づけると噛みつかれるから注意しろ」

「植物なのに草食って……なんか微妙にえぐいような気がするよう」

「見た目は少々えぐいがな。魔女殿の好みだろうと思って」

「私をどういう目で見てんのよっ!」

「不満なら別のモノにするが。ではこれは持って帰ろう」

「わー! いるいるいる! こんな珍しいの見たことない。貰うったら貰うもん!」

「……やっぱり好みなのか」

「好みってゆーなっ!」

 否定しつつも魔女の視線はミミックフラワーに釘付けです。

 好みかどうかは別として、好奇心は大いに刺激されているようです。

「魔法薬の材料に使うもよし、繁殖させてみるのもよし。餌はその辺の雑草で構わない。雑食だから植物なら何でも食べる」

「……ウツボカズラも?」

「……多分」

 ミミックフラワーVS食虫植物。

 どちらが勝利するかは実験するまで分かりません。


 魔女はありがたくミミックフラワーを受け取りました。

 噛みつかれては困るので当面の世話はスカルくんに任せます。

「あんたらの指なら噛みつかれても骨だから心配ないしね~」

「ヾ(。`Д´。)ノ彡☆ブーブーッ!!」

 扱いのひどさにクレームを付けるスカルくん。

 段々魔女に対する勇気が育ってきているようです。

「あん? 文句あんの? あんたから材料にしてやろうか?」

「ガタガタ((((;;OдO;lll))))ガタガタ」

 ……障子紙レベルの勇気は一瞬で砕かれました。

 ご愁傷様です。


 こうして魔女の家庭菜園の片隅にミミックフラワーが陳列するのでした。

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