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おんちって言わないでぇっ!

 過流海水を無事に持ち帰った魔女は、さっそく薬の調合に取り掛かりました。

「ごっりゅごりゅ~♪」

 今回も変な歌を口ずさんでいます。

「ごっりゅっりゅりゅりゅ~♪」

 今回はごりゅごりゅ言ってないのにごりゅごりゅ歌っています。

 相変わらず音痴です。


「………………」

「………………」

 それを少し離れた位置から観察していた白銀龍親子は、何とも言えない表情になっていました。

 音痴には違いないのですが、自分たちを助けるために働いてくれている魔女に対してそれを突っ込むのは気が引ける、でもこのままずっと歌われ続けるのも耳に痛すぎる、といった感じです。

「うー……」

 そんな中、にゃんこだけが何も考えずに魔女の傍に寄っていきました。

「ますたぁ」

「ん~? 何かな?」

 魔女はごりゅごりゅ歌いながら返事をします。

「おんち……」

「っ!?」

 実に容赦のない一言です。

 素直なにゃんこが言うのですから悪意なんてあるわけがありません。

 つまり本音です。

 心の底まで透き通るほどの正直さで真実を告げたのです。

「あ……」

「にゃ、にゃんこ……」

 言ってはならないことを言ったにゃんこに対して、白銀龍親子はおろおろはらはらしてしまいます。

「お、おんち……?」

 魔女は震える声で訊き返します。

「うん。おんち。やめたほうがいいとおもう」

「っ!!」

 にゃんこの追い討ちに魔女は硬直しました。

 三分ほど硬直したあと、掻き混ぜ棒を床に落としてからがっくりと膝を突きます。

「お、おんち……おんち……私……おんち……?」

「だいじょうぶ。おんちでもぼくはますたぁがだいすきだから。でもうたはあんまりききたくないな」

「はうあっ!」

 大好きと言われているにもかかわらず、心の傷は更に容赦なく抉られてしまうのでした。

 天然キラーです。

「にゃ、にゃんこ! もうそのあたりで……」

 さすがに見かねた白銀龍がにゃんこを止めようとします。

「え? なんで? はくぎんりゅーもちびりゅーもつらそうにしてたよね?」

「え……」

 ぎくりと身を震わせる白銀龍。

「う~……」

「………………」

 縋るような眼差しを向ける魔女に対して、白銀龍は気まずそうに視線を逸らします。

「!!」

 視線を逸らされた魔女は更に打ちのめされました。

「みゅ~……」

 最後の頼みの綱、チビ龍にも視線を向けます。

「あ、あう~……」

 今度は気まずそうに頬を掻かれてしまいました。

「うわああああんっ!」

 魔女は今度こそ徹底的に打ちのめされてしまいました。

 しょんぼりとなって調合をやめてしまいます。

「うー……うー……」

 その後、壁の隅っこの方でしゃがみこんで『の』の字を描き始めます。

「どーせ音痴だもん……」

 いじいじいじいじいじいじいじいじ……

 完全にいじけてしまったようです。


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