結局犠牲になるのは……
「んふふふふ~」
貴賓席で魔女はちょーご機嫌でした。
るんたったと鼻歌を歌いだしてもおかしくない感じです。
「いったいどんな女装をさせたんだ?」
「それは見てからのお楽しみ~♪」
勇者も魔女の横で今か今かとにゃんこを待っています。
バトルフィールドでは司会が盛り上げるべくトークを開始しています。
「さて! いよいよ二回戦目の開幕です! ロリコン討伐トーナメントも盛り上がってきましたね!」
いつの間にか討伐トーナメントになっています。
司会さんってば正直すぎますね。
「赤コーナー、複尾族、九尾狐のミコト選手!」
言われて、赤コーナーから九尾の狐が出てきました。
もちろん基本は人間に近い姿ですが、お尻からはしっかりと九本の尻尾が生えています。
もっふもふです。
「ぎゃー! もふもふ! もふもふがあそこにーっ!」
魔女がもふもふに反応しました。
バルコニーから身体を乗り出して、今にでも飛び降りてしまいそうです。
「馬鹿! 危ないだろうが!」
慌てて勇者が引き止めます。
普段の魔女ならば浮遊魔法を使って無事に済ませるでしょうが、もふもふに理性を奪われている魔女がそこまで考えた行動をしてくれるかどうか怪しいところです。
それがわかっていたからこそ勇者も必死で止めます。
「離せー! もふもふが! もふもふもふがあそこにあるのにー!」
「落ち着け! もふもふならバトルが終わった後にでもできるだろうが!」
「そうだけどー! でもあのすばらしいもふもふがー!」
勇者に押さえつけられながらじたばたと暴れる魔女でした。
「仕方ねえな。とりあえずこれで我慢しとけ」
「わあっ!?」
勇者が捕縛魔法を黒鍵騎士に放ち、そのまま引き寄せました。
そしてもふもふ尻尾を魔女に握らせます。
「ひゃうっ!」
精神安定剤としては最上級ですね。
「ん~。相変わらずもふもふ素晴らしきかな~。仕方ない。これで我慢するよ~」
魔女の方も黒鍵騎士へのセクハラに夢中になりました。
「ひゃう! あっ! ふっ! 魔女殿! もうちょっとお手柔らかに! ふあああっ!」
魔女の横で一人びくびく悶える黒鍵騎士があまりにも哀れでした。




