一理あるわな
「つまりね、どんな卑怯なことをしたとしても、それは引っかかる方が悪いんだよ」
「うみゅ……」
とんでもない論理をぶちかます魔女ににゃんこが困惑しています。
ますたぁの言うことは絶対ですが、これに関しては頷きかねるようです。
「まあ、魔女の言うことも一理あるわな」
意外にも同意したのは勇者でした。
「そうなの?」
にゃんこが首をかしげます。
「おう。実戦に汚いも卑怯もないからな。勝った方が正義だ。どんな手を使われようと、防げなかった方が悪い。何を仕掛けられても対処できるだけの頭と警戒心を常に持っているべきなんだよ」
「うみゅ……」
勇者の言うことも正しいと思ってしまうにゃんこでした。
「勇者殿の言うことも正しいですね。確かに戦いの場できれいごとは無用です」
黒鍵騎士まで同意してしまいました。
にゃんこの女装にまで同意したつもりはありませんが。
「まあ限度はあるけどな」
「げんどって、どんなげんど?」
「うん。つまり自分一人が相手に仕掛けるだけなら何をしてもいいと思う。暗器だろうと目つぶしだろうと、それこそ金的だろうと」
「みゅっ!」
股間をおさえてぶるぶる震えるにゃんこでした。
想像してしまったのかもしれません。
びくびくなりすぎて尻尾がしおれてしまっています。
「ああもふもふが!」
魔女だけはもふもふの心配をしてにゃんこの尻尾を撫で回していました。
お手入れのつもりでしょう。
「だが他人を巻き込むのだけはご法度だな」
「そうですね。人質を取って脅迫するなどということはもう卑怯を通り越して下種な行いです」
勇者と黒鍵騎士が断言しました。
「ええと、つまりだれかをまきこまなければどんなひきょうなてでもつかっていいってこと? きょうはくはだめだけど、じょそうはおっけー、みたいな?」
にゃんこがたどたどしい理解を示してくれました。
超えてはいけない一線を守ることを覚えたようです。




