職権乱用
大陸統一トーナメントは順調に進んでいます。
どの選手も頑張って勝ち上がろうと必死です。
一度でいいからあのロリコン魔王に一撃喰らわせてやりたいとみんな張り切っています。
そんな様子をありありと感じとれてしまう魔女は面白そうに口元をゆがめています。
「魔王ってよっぽど人望がないんだねぇ」
しみじみと言わないでほしい、と魔王がため息をつきます。
「……人望がないというよりは、魔族そのものの性癖が問題なのですよ」
黒鍵騎士が重々しく口を開きます。
「魔族の性癖?」
それについては詳しくない魔女が首をかしげました。
右手はにゃんこの尻尾をもふもふ中です。
「陛下に限らず、魔族にはロリコンが多いのです。あの司会も含めて、少女趣味の魔族がかなり多く存在します。もちろん魔族のすべてがそうではありません。ただ、戦闘能力の高い魔族にその傾向があるようでして」
「つまり、参加者はほとんどロリコン?」
「その通りです。そして魔王の立場を利用して少女や幼女を……している陛下には半端ではない恨みを持っているのです」
「つまり、嫉妬?」
「そうとも言います」
「怒り爆発ロリコン一発?」
「………………」
つまり大陸統一トーナメントとは、魔王に成り代わる下剋上イベントというだけではなく、優勝まで上り詰めれば恨みつらみ積み重なっている魔王陛下を誰にはばかることなく殴ることができるという素敵なイベントなのです。
「ハルマ大陸には外見的に年を取らない、つまり永遠のロリ美少女となりえる女性はあまり多くありません。つまり魔族のロリコンは、少ないロリ美少女を早い者勝ちで落としていかなければならないのです。競争率は激しいですよ。そんな中、陛下だけは魔王権限でよりどりみどりなんですよ。魔王の勅命をかざせばどんな美少女も自分からやってきますからね」
「……職権乱用」
「それだけでは飽き足らず、気に入ったのなら他人のロリ美少女であろうと落としにかかるのですから、恨みに思うものが出てきてもおかしくないでしょう?」
「うん。百回殺しても飽き足らないだろうね」
「まさしくその通りです」
「余は悪くない!」
呆れる黒鍵騎士、納得する魔女、憤慨する魔王という三人なのでした。




