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さいてー

「へい、ぼっちゃん。黒鍵騎士様の推薦か何だか知らないけど、早いところ退場しておいた方がいいぜ。可愛い顔に傷をこさえたくないだろう?」

「だいじょーぶ。ぼくつよいもん!」

 にゃんこの対戦相手は鎌を持った死神風の選手でした。

 黒いローブを被って、鎌を振り回しながらにゃんこに言います。

 しかしにゃんこは強気に応じました。

「さてさて、第一回戦は異色の組み合わせとなりました。片や愛らしい使い魔にゃんこ選手と、片や顔まですっぽりとフードに覆われた首狩り族のグライヤ選手! 前回は七位とやや惜しい結果に終わりましたが、今回は優勝までこぎつけられるのでしょうか? 優勝すればあのロリコン魔王の首をころりと落としてくれるのでしょうか!? 非常に期待したいところです!」

「あははははは!」

 司会の魔族の言い回しに大ウケする魔女でした。

「やっぱりあいつ最高だな」

 勇者もこくこくと頷いています。

「……あいつ、余に何か恨みでもあるのか?」

 魔王がこめかみをぴくぴくさせながら唸っています。

 さすがに無礼すぎる言い回しにキレかけているようです。

 毎回似たような感じになっていますが、あの司会が観客に人気があるのでクビにするわけにもいかないのです。

 遠慮なく魔王陛下を扱き下ろすあの物言いこそが人気のもとになっている事実からは敢えて目を逸らしています。

「……やはり以前のことを根に持っているのでは?」

「以前? 何かしたか?」

 黒鍵騎士の指摘に首をかしげる魔王でした。

「十年ほど前に魔王権限で彼の恋人であるロリ美少女に伽をさせたことが原因ではないかと言っているんです」

「ああ、そういえばそんなこともしたかな」

 今更思い出したようで、魔王がぽんと手を叩きました。

「さいてー……」

 魔女の軽蔑視線が魔王に突き刺さります。

「失礼な。無理やり手籠めにした覚えはないぞ」

「じゃあ口説いたの? 恋人持ちの女の子を?」

「うむ。ちょうど倦怠期に入っていたらしくてな。一度ぐらいは浮気をして相手の反応を確かめたり刺激を与えたりするといいかもしれないぞと丸め込んだ」

「さいてー……」

 まさしく最低の行いでした。

 倦怠期は解消されたようですが、その後彼らの関係に大きなひびが入ってしまったことは間違いないでしょう。


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