魔王乗っ取り!?
そんな魔王のお誘いに、魔女はこんな答えを返しました。
「つまり、それって私が参加して優勝して、魔王に挑戦してぶちのめしたら私が魔王になれるってこと?」
「その通りだが、なんだ、魔王になりたいのか?」
物騒な返答に魔王はびくびくたじたじです。
魔女の実力を知っているだけに決して不可能ではない、魔王の椅子を乗っ取られる可能性を本気で考えてしまいます。
「そうだなあ、引退勇者も飽きたし、このあたりで魔王に成り代わってみるのも面白そうかもなあ」
「勇者まで!?」
そして勇者まで参加を表明してきたので、とても困ったことになりました。
「なんだ!? お前らそんなに余を陥れたいのか!?」
魔王は泣きそうな声で叫びます。
実際のところ泣いてしまいたい気分でした。
それなりに仲良くしているつもりの二人から、いきなり乗っ取り宣言をされてしまったのだから当然かもしれません。
「陥れたいわけじゃないけど、そうやって困ったり慌てたりするのを見物するのは面白い」
「同感」
ここで魔女と勇者が絶妙のコンビプレイを見せてくれました。
二人して魔王をこてんぱんにしてやるぞというオーラが出ています。
「待て! 待て待て! お前らが参加したらそれこそ不公平だ。どの魔族が出てきても相手にならんぞ! 公平性に欠くから魔王として断固拒否する!」
こんな物騒な二人に参加されては、それこそ一瞬で勝負がついてしまいます。
魔王としては主催者としてトーナメントを盛り上げる義務もあるので、それは大変よろしくありません。
それとこの二人が束になって襲い掛かってくるなら、自分は間違いなく魔王の座から引きずり降ろされるという確信もあります。
冗談ではありません。
「参加してみたいな~」
「みたいぜ~」
上目遣いで魔王にお願いしていますが、もちろん首を縦に振ることは断固拒否です。
「却下だ!」
「魔女殿、勇者殿、面白いのはわかりますが、その辺で勘弁してあげてください。陛下が本気で困っていますから」
「うん。分かった」
黒鍵騎士に言われてあっさりと引き下がる魔女でした。
「まあ狼狽ぶりを堪能したから満足だしな」
勇者の方も飽きたようで、あっさりと引き下がりました。
「………………」
完全に遊ばれていると分かった魔王はしょんぼりと肩を落とすのでした。




