ちょっと困る
「………………」
魔女に『お願い』をしてしまった黒鍵騎士は、にゃんこの代わりに魔女に襲われてしまいました。
襲われるといってもエロ方面ではありません。
エロ方面は当分あきらめざるを得ないようです。
黒鍵騎士が断固拒否しました。
ならばということで一緒に寝てほしいというお願いを断ることができませんでした。
自分がある程度犠牲になることでにゃんこの貞操が守られるなら安いものだと言い聞かせています。
にゃんこは今頃ひとりで眠っていることでしょう。
ますたぁと一緒にいられないのは少し寂しいですが、今のますたぁと一緒に眠るのはちょっと怖いので遠慮したいようです。
にゃんこにも心の準備が必要なのですね。
「えへへ~」
黒鍵騎士の腕枕でご機嫌の魔女でした。
「……陛下に知られたら私が殺されそうですが」
「大丈夫。魔王が黒鍵騎士をシメようとしたら、私が魔王をシメてあげるから♪」
「………………」
それが決して不可能な大言壮語ではないというのが分かっているだけに、黒鍵騎士は乾いた笑いを浮かべてしまいました。
「魔女殿。焦らなくてもいいのではないですか?」
黒鍵騎士は魔女を怒らせるかもしれないと思いながらも、あえて口にすることにしました。
「何が?」
「間違っていたらすみません。でも、魔女殿が私やにゃんこと、その……そういう関係になりたがるのは、絆を求めているように見えるんです」
「………………」
「魔女殿はいつも楽しそうですし、自分の欲望に忠実ですし、呆れるぐらい相手の都合を考えてくれない傍若無人の権化ですけど」
「……そこまで言わなくても」
ちょっぴり傷ついてしまう魔女でした。
「でも、私には少しだけ本心を晒してくれていますよね」
「まあ、ね。たまには言いたくなるときもあるんだよ」
「知っています。魔女殿はこの世界に一人きりだという気になっているのでしょう?」
「ん、まあね」
「勇者殿も同じ世界の出身ですが、時代が違いすぎますし、どうしても同類だとは思えないでしょうし」
「まあ、そうだね」
セクハラをしに来たはずなのに、なぜかシリアス展開に突入してしまってちょっと困る魔女でした。




