お願い……です……
「はい、そこまでです」
「うきゃー!?」
魔女は後ろから抱き上げられてにゃんこから遠ざけられました。
魔女を抱き上げたのは、
「邪魔しないでよ黒鍵騎士のばかーっ!」
黒鍵騎士でした。
抱き上げられてじたばた暴れる魔女は、黒鍵騎士に文句を言いまくりました。
「子供相手に襲いかからないでください。しかも魔王城で」
「いいじゃんいいじゃん! その為に性教育をほどこしたんだから!」
「だからまだ早いと言ってるんです!」
「こういうのに早すぎるっていうのはないと思うよ~。知識っていうのはどんなものでも無駄にはならないだろうし」
「知識の種類にもよるでしょう!」
「エロ知識ならなおさら人生における財産だねっ!」
「言い切らないでください!」
これが十三歳のロリ美少女のセリフかと思うと、実に嘆かわしいですね。
「こっけんきし~。ありがと~」
にゃんこは涙目で黒鍵騎士にお礼を言いました。
「にゃんこもこの様子ですし、諦めたらどうですか? 嫌がる相手を無理やり組み敷きたいわけではないでしょう?」
「……それもちょっと捨てがたいかな~」
「悪趣味過ぎますね」
「ほっといてよ~。欲求不満はほどよいところで解消しないと暴走しちゃうんだよ。そうなったら黒鍵騎士が責任取ってくれるの?」
「魔女殿が受け側なら陛下が可愛がってくださいますよ」
「あんなロリコンオヤジはお断りだよっ!」
「………………」
魔王が一番可哀想かもしれませんね。
「とにかく今夜はやめておいた方がいいですよ。にゃんこも怯えていますし」
「その怯えをじっくりほぐして快感に導くのが醍醐味なんだけどなぁ~」
「……怒りますよ」
「うっ!」
一度はブチ切れた黒鍵騎士の恐ろしさを味わっているだけに、逆らいづらい魔女でした。
「ぶー。分かったよぅ。明日にする」
「明日もダメです!」
「にゃんこは私の使い魔なんだよ! 黒鍵騎士にそこまで指図される覚えはないんだからねっ!」
「指図はしていません! お願いしているんです!」
「お願い?」
「お願い……です……」
魔女の期待に満ちた瞳はきらきらと輝いていました。
黒鍵騎士、二度目の失言かもしれません。




