健気な努力
「これ、あげるよ」
魔女はそもそもの用事であった土人形のお土産を魔王たちに渡してあげます。
その際に、これは身代わりアイテムであることも説明しています。
「黒鍵騎士と俺たちの人形にはえらい落差があるなぁ」
勇者が盛大なため息をつきます。
自分の姿を模した凶悪な土人形を見て、いろいろと思うところがあるようです。
「これじゃあどっちが魔王なんだか……」
「いいではないか。余の人形なんてこれだぞ」
魔王が恨めしげに崩れた人形を勇者に差し出します。
「………………」
「………………」
どっちもどっちだという結論に至ったようです。
魔女の悪意が垣間見える作品ですが、それでも身代わりアイテムとしては一級品なので捨てるのももったいない、という困ったお土産でした。
「ありがとうございます。いざという時には使わせていただきますね」
黒鍵騎士の方は普通に可愛らしくデフォルメされていたので、素直に受け取ってくれました。
主と勇者に対する扱いの悪さに対してはもちろんスルーでした。
「うん。大事にしてね~」
魔女はさっそく買ってきた薔薇本をソファで読みふけっています。
買った本は即読むべし、というのが本に対する礼儀だとでも言うように。
「………………」
そんな魔女を見て魔王も勇者もがっかりしているのが馬鹿らしくなりました。
自分たちも魔女にならってロリエロ本と巨乳本を読みふけり始めます。
こたつを囲んで各種エロ本を読みふける魔女と魔王と勇者の図がそこにはありました。
「……お茶でも淹れてきます」
がっくりと肩を落としたのはもちろん黒鍵騎士です。
「じゃあぼくはあたらしくかってもらったほんをよもうかな~」
にゃんこが『キャベツ畑とコウノトリ』を袋から取り出しました。
名前とは裏腹な汚れた内容です。
「……にゃんこ、お茶を入れるの手伝ってほしいんだけど、いいかな?」
無駄だとわかっていてもそれを少しでも遅らせようとする黒鍵騎士の健気な努力が涙を誘います。




