独断と偏見に満ち溢れた意見
「うう~……」
ひりひりする頬をさすりながら、魔女が恨めしげに黒鍵騎士を睨みつけます。
「というか黒鍵騎士はこんなところに何をしに来たのよ。人のこと言えないじゃん~」
「私は陛下の命令でやってきただけです」
黒鍵騎士がしれっと言いました。
「魔王の命令ってことは、ロリエロ本?」
「……ええ。ロリエロ本です」
心底嫌そうに答える黒鍵騎士でした。
「おう、黒鍵騎士さん。陛下の予約本、まとめてあるぜ。持って帰りな」
そして店主の方もどさっと紙袋を机の上に置きました。
中身はロリエロ本が二十冊ほどでした。
一冊目のタイトルが『ちっぱいヘブン』でした。
「ふーん……」
魔女はまじまじと眺めながら、黒鍵騎士を振り返りました。
「黒鍵騎士はこういうの読まないの?」
「好みではありませんから」
「嘘!」
「なんで即答で嘘扱いなんですか!?」
「だってこの世界にエロ本に興味がない男がいるなんて信じられない!」
「独断と偏見に満ち溢れた意見を私に押し付けないでくださいっ!」
黒鍵騎士が憤慨しました。
黒鍵騎士はそういう部分がとても淡泊なので、興味がないというよりは興味が薄い、という方が正確かもしれません。
「じゃあこっちに興味がある?」
魔女が鞄の中から薔薇本を取り出しました。
タイトルは『兄貴の世界』。
マッチョが半裸で絡んでいる表紙です。
「……破いていいですか?」
怒りを通り越して冷めた視線で魔女を睨みます。
どうやら更に怒らせてしまったようです。
「駄目だよもったいない」
破かれては堪らないと、魔女が仕舞い込みました。
これはあとからのお楽しみです。
勇者は巨乳本。
魔女は薔薇本。
にゃんこのためにキャベツ畑とコウノトリ。
そして黒鍵騎士が魔王のお使いでロリエロ本。
今日の本屋さんはとてもとても儲かったことでしょう。




