触手キター!
カルラド大陸の南にある渦巻き……もとい過流海域は、年中無休で海水が渦巻いている場所です。
強烈な渦を巻いているので、このあたりは船も近づくことが出来ません。
しかし、
「船で近づけないなら飛んでいけばいいもんね~」
白銀龍の背に乗った魔女はごきげんに呟きました。
既に五時間は飛行しています。
「まあ、人間には難しいだろうな」
白銀龍がぼそりと呟きます。
「だろうねぇ。かれこれ五時間くらい飛行してるよね」
「浜の辺りから計算するなら三時間ほどだな。人間の魔力ではとっくに限界が来ているはずだ」
「うん。私でも蓄積魔力を使わないと無理かな。先代魔女って知識はかなり膨大だったし魔力運用もかなり上手だったみたいだけど、魔力そのものはあんまり大きくないみたいなんだよね。土地の魔力を上手に使っていたみたい」
「そうだろうな。あの土地は魔力のバックアップ用途だったのだろう」
「今はスカルくん達の動力源だけどね~」
「……死者を酷使するのは趣味がいいとは言えないな」
「そう? でもにゃんこと遊んでるときのスカルくんって結構楽しそうだよ」
「……我には悲鳴を上げているように見えたのだがな」
白銀龍はにゃんことチビ龍が残虐パズルで遊んでいた光景を思い出します。
世にも恐ろしい光景だったように思えました。
人骨パズル……子供の無邪気な残酷さって本当に恐ろしいですね。
「大丈夫大丈夫。あと一か月もすればそれが快感になってマゾ趣味に目覚めるはずだから」
「……いいのか、それで」
いいわけがありません。
そんなものに目覚めさせてどうするつもりなのでしょう。
「あいつらにゃんこの萌えさえあれば喜んで働いてくれるからノープロブレムだよ」
「……まあ、深くは突っ込まないでおこう」
深く考えてはいけない問題のような気がします。
過流海域に到着しました。
「へえ~、すっごい渦巻きだねぇ」
魔女は感心したように呟きます。
すでに白銀龍の背からは降りています。
ルナソールに乗って浮遊中です。
白銀龍の方は人型になっています。龍の身体よりも人型の方が作業しやすいからでしょう。
「はいこれ、容れ物」
魔女は十リットルタンクを白銀龍に手渡しました。四●元ポケッ……ではなく、魔女の鞄から取り出されたものです。
「随分と必要なのだな」
「自分の研究用も兼ねてるから」
「……なるほど」
いつも通りの魔女でした。
白銀龍はタンクを受け取ってから中心部の海水を汲み入れていきます。
満タンまで入れてから蓋を閉めました。
「これでよいか、魔女殿」
「おっけーなのだっ!」
魔女はタンクを受け取って鞄に入れました。
「じゃ、帰ろっか。渦巻いてるのずっと見てたら目が回っちゃった」
「そうだな。特に見所がある場所でもないし」
白銀龍は龍の身体に戻って魔女を背に乗せました。
そのまま陸に向けて飛び立つ筈だったのですが、
「!?」
「わひゃっ!?」
いきなり、海水が襲いかかってきました。
「な、なんだっ!?」
「わ、わかんないよっ!? う、海の触手!? 触手巻きつけプレイ!?」
「何の話だ!?」
海水が触手の形になって魔女と白銀龍に巻きついていきます。
その様子はまさしく触手巻きつけプレイと呼ぶにふさわしいのですが、地球世界の表現は残念ながら白銀龍の理解を得られなかったようです。
理解されても困ります。エロ方面ですし。
「くっ!」
「ひ、引き込まれる!?」
触手は魔女と白銀龍を海の中へと引きずり込んでいきました。
どうやら何者かが二人を招待しているようです。




