イカ料理を堪能しましょう
「もっふもふ~。もっふもふ~。どっろどろ~。どろっどろ~♪」
薬草と水薬を混ぜ合わせながら魔女がもふもふトリートメントを調合してします。
黒鍵騎士のお土産の分と、我が家のにゃんこの為と二人分作っているのでちょっと量が多くなってしまっています。
窯で煮込みながらもふもふ~と口ずさんでいます。
今は緑がかった色をしていますが、これが白くてドロドロになっていくかと思うと複雑な気持ちになってしまいます。
三時間後――
魔女のもふもふトリートメントが出来上がりました。
中身がよく見えるように透明なガラス瓶に入れられたもふもふトリートメントは、魔女の宣言通りに白くてドロドロしていました。
「完成したんですね……」
「うん。でも実はちょっとした匂いエッセンスを入れるかどうかで悩んでるんだよ」
「匂い?」
「うん。トリートメントってちょっとした香り付けがあったりするじゃない?」
「しますね」
「だからこのもふもふトリートメントにも香り付けをしてみようかなーって……」
「どんな香りを付けるのですか?」
自分の尻尾から妙な匂いを発せられてはたまらないので確認せずにはいられない黒鍵騎士でした
「イカの匂い!」
「却下ですっ!」
白くてドロドロした液体にイカ臭さが混じったらもうまんまアレじゃないですか! と黒鍵騎士が魔女を怒鳴りつけました。
間違ってもそんなモノは受け取りたくありません。
尻尾の毛並みお手入れの為であっても断固として受け取り拒否です。
「白くてドロドロしててイカ臭い液体をぶちまけられた黒鍵騎士のもふもふ尻尾って想像するだけで鼻血ものなんだけどなぁ」
「想像するだけでおぞましすぎますよっ!」
魔女と黒鍵騎士が言い合いを続ける中、にゃんこがとてとてと近寄ってきました。
「ますたぁ。きょうのばんごはんはいかがたべたーい!」
食べ物の話題だったのでにゃんこがそそられてしまったようです。
『イカ臭い』の意味をまだ知らないピュアな瞳がそこにありました。
「よし! じゃあ今日はイカ尽くしのご飯にしよう!」
「さんせー!」
「いや、このタイミングでイカ料理は勘弁して貰いたいんですが……」
黒鍵騎士が心底嫌そうに言いました。
「今日はみんなでイカ臭くなるぞー!」
「なるぞーっ!」
拳を振り上げる使い魔とますたぁの姿がそこにはありました。
「……はやく帰りたい」
黒鍵騎士の瞳にはきらりと光るものがありました。




