時には諦めも肝心です
「ま、まあ角は全部収集出来たんだし、それでよしとしようぜ」
「うん……」
潰れた頭部から無事だった角を回収するにゃんこはしょんぼりしていました。
早く帰ってますたぁに慰めて貰いたいと思っています。
「ますたぁにもふもふされたいな」
「………………」
それはとても危険な発言であることに本人だけが気付いていません。
セクハラ立候補、一番にゃんこ!
的な発言であることに全く気付いていません。
離れた位置で怯えているお母さん亜竜はそんな様子を見ていました。
「うー……」
守ったのに怯えられて、にゃんこは悲しくなってしまします。
「あ、生まれそう」
勇者が割れていく卵に気付きました。
「え?」
子供が生まれるようです。
お母さん亜竜は卵を避難させようとしますが、生まれたばかりの子供に無茶はさせられません。
出来るのはにゃんこを威嚇して守ろうとする意志を見せることだけです。
しかしさっきの頭部くちゃっとが脳裏に甦って震えてしまいます。
「うー……」
そんな気持ちが良く分かったにゃんこはやっぱりしょんぼりしてしまいました。
「くるぅ~……」
そして子供が生まれます。
小さな亜竜はとても可愛らしい姿をしていました。
「あ、かわいい」
にゃんこは落ち込んでいたのも一転して目を輝かせました。
可愛いもの大好きです。
ついつい触りたくなってしまい近づきます。
「グルウッ!」
そしてお母さん亜竜に威嚇されます。
「にゃう……」
命懸けでも子供を守る、という意思表示です。
にゃんこはまたしょんぼりとなってしまいました。
そっとなでなでしたいだけなのに、それがどうしても叶いません。
「諦めろ、にゃんこ。その状態だとどうやっても警戒は解けないぞ」
勇者が言いました。
とても正しい意見でした。




