もふもふトリートメントは欲しいかも
魔女に好意は持っていますが、あくまで親愛の情であって恋愛感情ではありません。
年齢差的にも魔女の年齢的にも恋愛感情を抱くには抵抗があります。
魔女が今まで黒鍵騎士にアタックしてきたのはそれなりに本気ではありましたが、やはりどこかで『恋愛ごっこ』をしてみたいという気持ちがありました。
いつか元の世界に帰るかもしれない。
だからその間寂しさを紛らわせてくれる存在として黒鍵騎士にちょっかいをかけていたとも言えます。
もちろんそこにはもふもふという大切な要素が入っていますが。
もふもふ八:恋愛ごっこ二ぐらいの割合ですね。
これから本気になるとしたらもふもふ七:恋愛感情三ぐらいに変化するかもしれません。
……どちらにしてももふもふの割合が大きいことに変わりはないのですが。
「で、本気になっていい?」
魔女が上目遣いで問いかけます。
上目遣いなのはもちろん作戦です。
魔王ならいちころですが黒鍵騎士はロリコンではないので困った表情を浮かべるだけです。
「……あと三年したら考えてみます」
「なんで三年?」
「私はロリコンではありませんから」
あと三年すれば魔女は十六歳です。
その年齢になればそれなりに育ちます。
その時に改めて恋愛対象として見ることが出来るか考えてみる、ということでした。
「うーん」
それを聞いて魔女が本気で悩みました。
「どうしたんですか?」
「いや、黒鍵騎士をロリコン化するか、それとも私がぼいん化するかどっちにしようか悩んでて」
「やめてください」
切実に止めて下さいとお願いする黒鍵騎士でした。
魔王と同類になるのは絶対にお断りですし、勇者と同類になるつもりもありません。
女性の好みというのは特にないのです。
ごく普通に可愛い人がいればそれでオッケー的な感じなのです。
魔女はもちろん可愛いですが中身に問題があるのと年齢的に問題があるのとで恋愛対象になっていないというだけです。
「ま、じゃあ三年間それなりに努力してみようかなー」
「止めるつもりはありませんけど、具体的にはどういう努力をするつもりか訊いてもいいですか?」
「いいよ~。ええと、まずは私のおっぱい巨大化計画から始まって」
「始めないで下さい!」
「次に黒鍵騎士のもふもふ強化計画でしょ~」
「……やっぱりさっきの発言は取り消させて貰っていいですか?」
「駄目~♪ 今度もふもふ用のトリートメント開発するから期待しててね~」
「……まあ貰えるなら貰いますけど」
何だかんだ言いつつも尻尾の毛並みは気にする黒鍵騎士でした。
魔女には口が裂けても言えませんが、自分の尻尾の毛並みをそれなりに自慢に思っていたりもします。
「よし、頑張るぞー!」
「……何かを失敗してしまった気が」
目指せ黒鍵騎士陥落、と意気込む魔女に対して、慰め方を間違えたと肩を落とす黒鍵騎士でした。




