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一件落着のはず

「にゃーんぱーんちっ!」

 必殺にゃんぱんちが軍人Aの顔面にめり込みました。

 べきぼきばきぼき……と教育上大変よろしくない音がしています。

「●×△◆★!!???」

 軍人Aも数多くの修羅場を潜り抜けてきた猛者ですが、まさか直接戦闘能力の乏しい魔女の使い魔ごときがこれほどの身体能力を有しているとは考えなかったようです。

 潰れた顔を鑑みる暇もなく、咄嗟に武器を取り出す軍人Aですが、

「りゅーせーきっく!」

 べきいっ!

 と、にゃんこのりゅーせーきっくが軍人Aの大剣を真っ二つにしてしまいました。

「ひへあっ!!??」

 頑丈さに定評のある自慢の大剣が、まさか蹴り一発で破壊されるとは思っていなかったらしく、軍人Aは再び情けない悲鳴を上げます。

 魔力付与攻撃ですから武器に対しても絶大な破壊をもたらすのですが、もちろん軍人Aにそんなことは理解できません。

 軍人Aはあくまでも人間同士の戦に慣れているのであって、人外の戦は数えるほどしか経験していないのです。

「にゃっにゃっにゃにゃにゃにゃにゃっ!」

 そして容赦なくにゃんこの拳が軍人Aの胴体に叩き込まれていきます。

「げふっ! がはっ! ぐげえっ!」

 そろそろ止めないと原型が分からなくなりそうですね。

「はいにゃんこ、そこまで~」

「うみゅ」

 魔女の合図でにゃんこが止まりました。

 ますたぁの命令には絶対服従です。

 うみゅ、と可愛らしく呻いてもやっていることは凶悪ですけどね。

 あとに残されたのは死にかけている軍人Aと、魔女とにゃんこと、遠巻きに見ていた魔王と勇者と黒鍵騎士でした。

「にゃんこ、将来有望だな」

「さすが魔女の使い魔」

「いや、そういう問題でもないような気がするんですが……」

 魔王、勇者、黒鍵騎士はそれぞれの感想を漏らします。

 こうして魔女を利用しようとしたクラール王国の陰謀は暴力的に途絶えてしまいました。

「ますたぁ、このひとどうする?」

「街中にでも放置しておけば誰か面倒見てくれるんじゃない?」

「そっかー」

 いや、それで納得しちゃダメですよ。

 魔女は転移魔法を起動させます。

 血まみれの軍人Aの身体に転移魔法をかけて、近くの街に移動させました。

 軍人Aは魔女の家から退散させられます。

「これで一件落着だね」

「だね~」

 満足そうに微笑む魔女と納得するにゃんこですが、もちろんこの状況を一件落着だと思い込んでいるのはこの二人だけであり、その他三人はなんとも複雑な気分で展開を見守るのでした。

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