敵認定、にゃんこ発進!
「何故、そう思う?」
軍人Aはそれでも取り乱したりせずに冷静に対処しました。
このあたりは狸の蠢く上流階級の中を生き抜いただけのことはありますね。
「魔女には人の嘘を見抜く力があるのよ」
と、魔女の方も大嘘を吐きました。
もちろんそういう魔法もありますが、この場合は使うまでもなく丸分かりだったからです。
魔王の方に心当たりがない以上、相手が嘘を付いているのは間違いありません。
何故なら魔王はともかくとして黒鍵騎士は有能な側近なので各国の情報を把握していないわけがないからです。
その黒鍵騎士から報告を受けてない以上、魔族との戦争は嘘、もしくは当分先だということは確実でしょう。
「クラール王国は過去に勇者を得られなかった。だからこそ魔族に対しても人間に対しても何らかの切り札が必要になるのかなって思っただけなんだけどね。だったら魔族との戦争を開始する前に、人間との戦争で上下関係をはっきりさせておきたいんじゃないかな~って」
「………………」
「魔族との戦争が茶番だっていうのは上層部なら理解してると思うけど、だからこそ人間同士の戦争、つまりは力関係には魔族以上に力を入れている。違うかな?」
「……さすがは魔女といったところか」
軍人Aは観念したように溜め息をつきました。
「それで、こちらの要求は受け入れてもらえるのかな?」
「断ると言ったら?」
「クラール王国と魔女は正式に敵対することとなる」
軍人Aは持っていた剣を魔女に突きつけました。
「ふーん……」
魔女はにんまりと笑います。
軍人Aは自分が地雷を踏んでしまったことにまるで気付いていません。
「つまり、言うこと聞かないとここで私を殺しちゃうぞ、みたいな?」
「ああ。魔女は魔法に長けているだろうが、それでも近接戦に持ち込めば何も出来ないだろう? この状況ではこちらの言いなりになる以外の選択肢は無いはずだ」
「あははは。その冗談面白い」
「っ!」
緊張感に欠ける魔女の物言いに憤慨しかける軍人Aですが、
「ますたぁ、このひとてき?」
横にいたにゃんこが魔女にそう問いかけました。
「うん。敵だよ。殺しちゃ駄目だけど半殺しならしていいよ」
「わかった~」
なんとも呑気なやり取りの果てに、軍人Aはにゃんこに襲いかかられるのでした。
「ぎゃあああああーーっ!!」
哀れな悲鳴が魔女の家に響き渡ります。
にくきゅうではんごろしにされました(T_T)




