正義って胡散臭いよね?
こんこん、と魔女の家のドアを叩く音がしました。
どうやらお客様のようです。
「にゃんこ~、よろしく」
「はーい」
面倒臭いのでにゃんこに対応を任せます。
こういう面でもにゃんこは役に立ちますね。
「どちらさまですかぁ?」
にゃんこがドアを開けて来訪者の確認をします。
「失礼。こちらに紅の魔女はおられるかな?」
「うみゅ……」
やってきたのはいかにも軍人っぽい人でした。
びしっと軍服を着こなし、筋肉質の身体で姿勢良く立っているので、本来の身長よりも高く見え、巨人のような雰囲気を醸しだしていました。
彼のことは軍人Aと呼びましょう。
「ええと、ますたぁはいるけど、なんのごようですか?」
まずは用件を尋ねます。
「紅の魔女に依頼があってな。取り次いではもらえないか?」
にゃんこが使い魔だと分かっていても軽々しく扱わず、きちんと接してくれます。
これだけでも人格的には及第点ですね。
「ええと、ちょっとまってください」
にゃんこは振り返って魔女を呼びます。
「ますたぁ。おきゃくさんがますたぁにたのみたいことがあるんだって~」
「んー? 依頼? 別にお金に困ってないから外部の依頼なんて受けるつもりはないんだけど……どちらさん?」
「ぐんじんっぽいひとー」
魔女が玄関までやってきて軍人Aの姿を確認しました。
「噂には聞いていたが、本当にまだ子供なのだな」
軍人Aはやや驚いたように魔女を見ます。
紅の魔女の異名を持つ腕利きが十三歳の子供だったことは知っていても、やはり驚きを隠せないようです。
「どうも~。見たところどこかの国のお偉いさんみたいだけど、そんな人が私なんかに何の御用かな~?」
お偉いさんだと分かっていても全く敬うつもりはないようです。
それでこそ魔女ですね。
「うむ。正義を遂行するために紅の魔女の力をお借りしたい」
「……はい?」
正義という言葉を堂々と掲げる相手はロクなモノではありません。
魔女は胡散臭そうに軍人Aを見つめるのでした。




