次世代教育にも力を入れています
「はい、勇者。ヌシの味噌漬け出来たよ」
「おー。さんきゅー」
勇者が月詠の里で最高級の味噌を調達してくると、魔女はさっそくヌシの味噌漬けを作り始めました。
味噌に漬け込んで数日置くと、身に味噌が染み込んでとても美味しくなります。
保存の魔法をかけてタッパーごと勇者に渡しました。
「にゃんこと黒鍵騎士はもうすぐ焼けるから待っててね~」
そして今から食べる分も焼いています。
「たべる~」
「いい匂いがしますね」
黒鍵騎士も魔女の家に滞在して一週間以上が経過しますが、ようやく環境になれてきたようです。
もふもふセクハラさえなければ魔女の料理はとても美味しいですし、にゃんこの戦闘訓練もそれなりに楽しいので居心地は悪くないと思っています。
「余の分はっ!?」
いつの間にか戻って来た魔王が涙目で訴えます。
「魔王働いてないし」
ヌシ釣りに貢献したのは魔女とにゃんこと勇者と黒鍵騎士です。
魔王はちっとも貢献していないので食べる権利はないと言いたいようです。
「……お土産だ」
タダ飯を食わせるつもりはないと主張する魔女に対して、魔王は渋々と月詠土産のわらび餅を献上しました。
ご機嫌取りの為に買っておいたのですが、まさか別の用途で使うとは思っていませんでした。
「ん。仕方ないから魔王も食べていいよ」
わらび餅を受け取った魔女は口では仕方ないといいつつも嬉しそうに箱を眺めています。
わらび餅大好きっ娘です。
「魔王もあんまりちょくちょく来てると仕事が溜まってやばいんじゃないの? 雑用押しつけられる側近もいないんだし」
「心配ない。余はこれでも『魔王』だぞ! 仕事など他の部下に押しつけてきたわっ!」
「陛下……」
自分の仕事を放りだして部下に押しつける主に対して、黒鍵騎士は深々と溜め息をつきました。
「問題ない。どうしても余が処理しなければならないことはきちんと済ませてある。次世代教育のためにもある程度他の奴にも仕事はさせておかないとな」
「……理屈が通っているのが腹立たしいですね」
屁理屈が上手な主に再び溜め息をつく黒鍵騎士でした。
「焼き上がったよ~!」
そしてお待ちかねのヌシの味噌漬けが焼き上がります。
食欲をそそる香ばしい匂いがみんなの食欲をガクブル刺激してくれました。




