きゃっちあんどりりーすはしません
「あいすらんさーはっしゃ~!」
にゃんこは氷の槍『アイスランサー』を発動させました。
氷で巨大な槍を形成して、目標に向かって飛翔する攻撃魔法です。
魔女直伝なだけあって全体的にトゲトゲしている凶悪改造付です。
勇者の言葉によると、ヌシは己の領域を荒らされたら怒って出てくるとのことなので、にゃんこは素直に行動しました。
つまり、アイスランサーを湖にぶち込んでヌシを怒らせてみよう作戦ですね。
考えなしなところが馬鹿で可愛くて萌えますね。
「にゃんこーっ!?」
船の上でのんびり釣りをしていた黒鍵騎士は慌てて浮遊魔法を使って避難します。
もちろんバケツは確保の上で。
船は諦めます。
アイスランサーがどっぱーん、と湖に直撃して大きな波が発生してしまったので、乗ったままでは転覆確実です。
黒鍵騎士は泳げるので溺れる心配はありませんが、戦利品の魚をきゃっちあんどりりーすするのは本意ではありません。
ゲットしたからには食べます。
逃がすものかの精神です。
「あ、危なかった……」
ふよふよと岸側に移動しながら黒鍵騎士がため息をつきます。
「まさかにゃんこがあんな行動に出るとは」
勇者も呆れながらその様子を眺めています。
「勇者殿が余計なことを言うからでしょう」
「そもそも主導権を握っているはずの魔女が早々に投げ出したのが問題じゃないか?」
「ん~。面白そうだからいいじゃん」
魔女の方は呑気に様子を眺めています。
バカなところもかわいいにゃ~、などとのたまっています。
飼い主も大概馬鹿ですね。
「最近のにゃんこは悪い意味で魔女殿に似てきた気がします」
「ちょっとー、悪い意味ってどういう意味よー」
魔女がぷっくりと頬を膨らませます。
そしてもふもふします。
「くあうっ!」
魚のバケツを落としそうになってしまい、勇者が絶妙なタイミングでキャッチします。
「付け根は、付け根はやめてくださいーっ! あうっ!」
びくびく悶えている黒鍵騎士によいではないかよいではないかの勢いで攻め込む魔女です。
「今度は浴衣姿の時にやってみようかな~、帯をくるくるしたい~」
「どこの悪代官だよ……」
勇者が呆れながら突っ込みをいれます。
「あ~れ~……とか言わせてみたいな~」
「言いませんからっ!」
そろそろお触りがヤバい部分に到達しそうになったところで、
「ますたぁ~! ぬしがきたーっ!」
と、にゃんこが叫びました。
ぐっどたいみんぐ?




