小動物虐待現場
「餌は何にするんだ?」
勇者が問いかけます。
ヌシと言えばそれはもうモンスター級の大きさを誇るものと予想されます。
そうなるとごく普通の餌、ミミズやムシ、奮発していくらの粒というわけにもいきません。
そんなしょぼい餌では見向きもしてもらえないでしょう。
「んー。そうだねぇ」
魔女は森を見渡します。
レギオス湖は森に囲まれた場所にあり、つまり餌を調達するにはまったく問題のない環境ということになります。
「えいっ!」
魔女は指先に魔力を集中して、拳銃の形で発射しました。
「きゅっ!?」
魔力弾が当たったのはフェレットのような動物でした。
「これだけ大きければヌシも食らいついてくれるでしょ♪」
「きゅーっ! きゅきゅーっ!」
大きな針を口に突っ込まれそうになったフェレットもどきは涙目で大暴れしました。
自分がヌシへの餌にされることよりも、口の中に針を突っ込まれることに恐怖しています。
まあ、当然ですね。
「ますたぁーっ! やめてあげてえっ!」
そして小動物虐待を目にしたにゃんこが涙目でますたぁを止めます。
「そそそそそうだぞ魔女! いくらなんでもソレはない!」
勇者も若干声が震えています。
魔女の魔女的猟奇行動にガクブルのようです。
フェレットもどきの口に針を突っ込もうとしている手つきにまったく迷いがないことも震えを加速させています。
「駄目?」
魔女は本気で首を傾げています。
餌としては丁度いい大きさなのでこのままやってしまいたいのに、と思っていたのですが、やはり周りの反対には逆らいづらいようです。
「はあ……魔女殿。そのフェレットを解放してあげてください」
「うん。わかった」
「………………」
黒鍵騎士が言うと素直に従いました。
愛の差ですかね?
でも点数稼ぎをしようにもすでに取り返しの付かないほどマイナスポイントがたまっていると思いますが。
「黒鍵騎士。鞄の中からタッパーを取り出してくれる?」
「どうぞ」
魔女に従い、黒鍵騎士はタッパーを取り出しました。
その中には鶏一匹分のかたまり肉が入っています。
それを針に引っ掛けて、湖へとぼちゃんしました。
「最初にそれを出せーっ!」
餌は最初から用意していたのでした。
勇者が脱力しながら言います。
「びっくりしたぁ。ますたぁってばときどきじょーだんがきついもんねぇ」
にゃんこもホッとしたように言いました。
「いや、本気だったよ。あれは予備。活きのいい方が効果的かなって思っただけ」
「「「………………」」」
魔女の声は間違いなく本気でした。
そして予備があって本気でよかったと胸を撫で下ろすにゃんこ達なのでした。




