パシリ勇者見参
「釣りに行こう!」
「釣り、ですか?」
魔女は黒鍵騎士を釣りに誘いました。
「魚をご所望でしたら生きているのを買ってきますが」
わざわざ釣りに行かなくても、と黒鍵騎士が言うのですが。
「あ、違う違う。魚が食べたいから釣りに行きたいんじゃない……あ、いや、アレは食べてみたいかも」
「?」
魔女は歯切れ悪そうに言います。
「ええとね、レギオス湖って知ってる?」
「ええ。世界最大の湖ですよね」
ここから三百キロほど離れた場所にある大きな湖のことです。
世界最大の大きさを誇り、昔は釣り人がよく縄張りにしていたらしいのですが、最近はめっきり人が寄りつかなくなったとも言います。
寄りつかなくなった理由は『ヌシ』が棲むようになったからだと言われています。
「……まさか」
「そのまさかだよ。ヌシって見てみたくない?」
「まあ、興味はありますが」
「だよねだよね! ただ釣りに行くのもつまらないし、せっかくだからヌシを釣り上げようよ!」
「……本気ですか?」
「本気本気バリ本気!」
「……本気の眼ですね」
本気以外の何物でもない目線でした。
興味でキラキラしています。
「座標はだいたい分かるし、転移でいけばすぐだよ!」
「その前に釣り道具を揃えなければ」
「あ、それは大丈夫」
「持っているのですか?」
「ううん。そうじゃないけど」
魔女は玄関の方に視線を移します。
すると丁度いいタイミングで開きました。
「ただいま~。道具買ってきたぞ~。特別製の釣り竿」
勇者が巨大な釣り竿を持って帰ってきました。
「ご苦労様~。これでオッケーだね」
「………………」
勇者をパシリにしていますよこの魔女さんってば。
パシリにされる勇者も勇者ですけどね。
というわけで釣り編が始まります。




