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ハーレム希望の勇者さま

 そして魔女の魔女による魔女の為の悪行が開幕したのです。

「な、何をするんですか勇者殿!?」

「すまん。黒鍵騎士。これも魔女の命令なんだ」

 黒鍵騎士を後ろから羽交い締めにした勇者は申し訳なさそうに謝ります。

「いつから勇者殿は魔女殿の部下になったのですかーっ!?」

 じたばたと暴れる黒鍵騎士ですが、もちろん勇者の力に敵うはずがありません。

「あわわわ……」

 にゃんこは壁際でガクブルしながら見守っています。

 そして、

「にゃーははは! 大人しくするのだ黒鍵騎士! 大人しくしていればすぐに済む!」

 薬の小瓶を抱えた魔女が悪役笑いをしています。

 ロリ美少女には似合わない笑い方と態度ですが、しかし完全にノリノリです。

「どこの悪役台詞ですかーっ! それから勇者殿を一体どうやって従わせているのですかっ!?」

 黒鍵騎士はじたばた暴れつつも質問だけはきちんとしています。

 情報収集に余念のない優秀な側近ですね。

「モテ薬を分けてあげるって言ったらすぐに協力してくれたわよ」

「……最低ですね……ぐはっ!」

「最低言うな。モテ薬でハーレム三昧夢の一日! 男なら一度は味わいたいシチュエーションだろうが!」

 黒鍵騎士の首を締め上げながら弁解という名の主張をする勇者でした。

「だ、大体そこまでしなくとも勇者殿は十分モテるじゃないですか!」

「それはそうだがハーレム体質ってほどじゃないんだよな。お姉さん方の筆下ろし以来、三人以上っていうのが無いんだよこれが」

「あってたまりますかーっ!」

 筆下ろし以来というのが何百年前の話だよと突っ込みたくなりますが、百年以上経過しても勇者の下半身は大変お元気なようです。

「というわけで十人規模のハーレムに囲まれてみたいなー、と男の夢を見ていたら、魔女が丁度いい 薬を譲ってくれるらしいじゃないか。こりゃあ協力しない手はないだろ」

「勇者殿は去勢されればいいと思います」

「おぞましいこと言うな!」

 片手で羽交い締めを維持しながら右手で尻尾をもふもふしました。

 性欲ともふもふ欲は別物らしいですね。

「あうっ!」

 そんな感じで勇者との取引を成功させた魔女は、記憶消去薬を黒鍵騎士のお口に突っ込みます。

「んぐっ! んむっ!」

「さ~ってと。飲み飲みしましょうねぇ~」

「んむ~~っ!」

 魔女さんってばすっかり悪役です。

 記憶消去薬の色が白くてドロドロした仕様になって、黒鍵騎士の口元から少しだけたれているのはご愛敬です。

 ……ご、ご愛敬ですよ?


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