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舐・め・て♪

「では口を開けてください」

「あーんってゆって」

 魔女は甘えた口調で言います。

 病人なのをいいことに要求の押し付けまくりです。

 ……普段もあんまり変わらないかもしれませんが。

「あ……あーん……」

「うは~。その照れた声がたまらないな~♪」

「………………」

 舌なめずりをする魔女を見て黒鍵騎士は部屋から出ていきたくなりました。

 魔女は黒鍵騎士から差し出されたレンゲにぱくつきます。

「むぐむぐ。うわ、本当にまともな出来だ。かなり意外」

「陛下はロリ美少女にモテるためならあらゆる努力を惜しみませんから」

「ロリコン中年としては合格かもしれないけど魔王としてはどうなのかなぁそれって」

「……ノーコメントでお願いします」

 コメントをすれば多分酷い言葉が出てくることでしょう。

「あーん♪」

 魔女は雛鳥のように次のおかゆを要求します。

「どうぞ」

 黒鍵騎士は作業のように次々とおかゆを魔女の口へと運びます。

「あ……」

 途中で少し失敗してしまい、魔女の口元にたれてしまいました。

「すみません。今拭きますから」

「舐めとって♪」

「っ!?」

「舐・め・とっ・て♪」

「……本気ですか?」

「本気だよ~。嫌なの?」

「……嫌だと言ったらどうするんですか?」

「ん~。本気で嫌ならやらなくていいけど、そこまで嫌われていたらちょっとショックかな」

「………………」

 横暴なんだかしおらしいんだか判断が難しい態度でした。

「はぁ……」

 しかし黒鍵騎士は深いため息をついた後、意を決したように魔女へと近づきました。

「っ!」

 そしてぺろりと魔女の口元を舐めました。

「えへへ~」

 魔女は幸せいっぱいの表情でした。

「……満足ですか?」

「満足満足~。ちょっと口元にも触れたしね~。私のファーストちゅ~は間違いなく黒鍵騎士だね~」

「っ!?」

「いや~。罪悪感に付け込んだ甲斐があったわ~♪」

「………………」

 幸せそうな魔女を見て罪悪感が急速に萎んでいく黒鍵騎士なのでした。


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