感じるよりも取って欲しい♪
黒鍵騎士の汚染魔力で意識を失った魔女が目を醒ましたのはそれから二日後のことでした。
「もふもふ……」
目覚めて第一声がこれなのですからもはや病気ですね。
本能レベルかもしれません。
「ますたぁっ!」
ずっと魔女のそばについていたにゃんこが魔女に抱きつきました。
その瞳には涙が滲んでいます。
どうやら随分と心配していたようです。
「にゃんこ……」
魔女は自分がどうなったのかをちゃんと覚えているのでにゃんこを優しく撫でて上げました。
ただし頭ではなく尻尾ですが。
起きるなりもふもふです。
「ますたぁ! あたま! あたまなでてぇっ!」
「ん~。よしよし」
右手で尻尾、左手で頭を撫でてあげます。
にゃんこの要望を叶えつつ自分の欲望も諦めないその姿勢はある意味で尊敬できるかもしれません。
「ますたぁのばかっ! しんぱいしたんだからねっ!」
「ごめんごめん。これももふもふゲットの為だから許してね」
「………………」
どうにもシリアスになりきれない状況でした。
「無茶をし過ぎですよ、魔女殿」
魔女の額に載せていた冷やしタオルを交換した黒鍵騎士が沈んだ声で言いました。
どうやらにゃんこと一緒にずっと看病していたようです。
「あ、黒鍵騎士だ~。ずっと看病してくれたの?」
魔女は嬉しそうにはにかみます。
「……それはまあ、私の所為でこんなことになってしまった訳ですし、責任を感じていますので」
黒鍵騎士は申し訳なさそうに頭を下げました。
魔王へのストレスが爆発したことは覚えています。
本来ならば魔王にぶつけるべき怒りの力で魔女を巻き込んでしまったのですから申し訳ない気持ちで一杯なのです。
「そっか~。感じるよりも取ってくれる方が嬉しいんだけどな」
「………………」
『責任を感じる』よりも『責任を取る』の方が嬉しいようです。
まあ元々のプランが黒鍵騎士ゲット作戦ですからね。
Bですけど。
黒鍵騎士はどう応えたものか悩んでしまい、深々と溜め息をついてしまいました。




