温泉へゴー!
温泉エリアは地下都市内ではなく、地上にありました。
「うあ~……極楽極楽……」
魔女は温泉に浸かりながら緩みきった表情で言います。
「あついね……ますたぁ」
にゃんこには少し熱かったようで、顔が真っ赤になっています。
「温泉とはこういうものなのだよ、にゃんこ。この気持ちよさが分からなければ日本人じゃないね」
「ぼくにほんじんじゃないよ」
「そう言えばそっか」
空は茜色に染まっています。
石灰棚温泉の一つに浸かりながら、魔女はその美しさに見とれています。
ドワーフの温泉は転移魔法陣で移動した先にあります。
地上に広がっていたのはトルコのパムッカレ温泉のような美しい景色でした。
丘陵地帯の石灰棚が弱酸性の雨によって溶け、地熱により温泉となり沈殿した石灰が固まった結果、このようなものが生まれたようです。
雪景色のような石灰棚は蒼い温泉を美しく引き立てています。
場所によっては雲の上に位置しており、まるで天空温泉を堪能しているような気分になります。
高所恐怖症の人間にはちょっと厳しいかもしれませんが、そもそも高所恐怖症であったら箒で空を飛んだり出来ません。
魔女とにゃんこは最も高い位置に陣取ってから温泉を堪能しています。
「いいね~、ここ。製作依頼じゃなくても旅行に来たい気分だよぉ」
温泉好きの魔女としてはお気に入り登録したいくらいの気分です。
「くればいいんじゃないかな。だってほうきでとべばすぐだよ?」
「そうだねぇ。ドワーフの許可さえあればいつでも堪能できるかな~」
異世界温泉旅行、素晴らしきかな。
あとは畳の部屋と座布団と布団とご馳走があれば完璧です。
……さすがにそこまで望むのは贅沢ですが。
あらかじめ食材を持ってきてから自前で用意するという手もあります。
「にゃんこが料理覚えてくれたら楽なのにな~」
「ねこまんまならつくれるよ?」
「それはちょっとな~……」
温泉で極楽気分のあとにねこまんま。
かなりしょっぱい気分になりそうです。
とにもかくにも温泉と景色を堪能する魔女とにゃんこなのでした。




