プランBに移行
「くっ! ぐがっ!」
魔王は黒鍵騎士の攻撃を必死で捌きます。
ダメージは確実に蓄積されていますが、今は堪え忍ぶしかありません。
黒鍵騎士を殺さずに無力化させるには力を使い果たさせるしか方法はないのです。
本来、こうなてしまった『黒鍵騎士』の処刑権限を『魔王』は有しているのですが、しかし魔王はそれを使おうとは思いませんでした。
黒鍵騎士をこうしてしまったのは自分の責任だという負い目もありましたが、それ以上に黒鍵騎士を殺してしまったら魔女に殺されるという確信があったからです。
どちらの割合が大きいのかは答えの出ない問題にしておいた方がいいでしょう。
しかし黒鍵騎士も実力は魔族の中でもトップクラスです。
いつもは目立たずもふもふ被害者でしかありませんが、本気になった黒鍵騎士は魔王に次ぐ実力者なのですから弱いはずがありません。
本気を出されたら魔王でも苦戦してしまいますし、ましてやストレスで暴走されたら手に負えません。
「うーん。これはやばいかな?」
魔女が見物しながら唸ります。
「やばい?」
「うん。魔王は黒鍵騎士を殺さないように頑張ってるけど、このままだと堪えきれなくなる。魔王も最終的には黒鍵騎士を殺してしまうかもしれない」
「そ、それはだめだよ~」
にゃんこが涙目になります。
黒鍵騎士が死ぬのは耐えられそうにありません。
同じもふもふ仲間としても。
「じゃあ魔王を見捨てようかな~」
「ますたぁ……」
にゃんこの魔女を見る目が険しくなります。
どうやら批難しているようです。
「うーん。魔王も見捨てたら駄目?」
「ますたぁならどっちもたすけられるでしょ?」
それはにゃんこの絶大なる魔女への信頼でした。
魔女には不可能など何一つないと盲信しているのかもしれません。
歌以外は。
しつこいようですが歌以外は。
「仕方ないなぁ。じゃあもふもふゲット作戦プランBを実践してみようかな」
「さっすがますたぁ!」
魔女はじゅるりと舌なめずりをしながら黒鍵騎士と魔王の戦いに割り込むのでした。




