もふもふ暴走
「こ、黒鍵騎士……?」
あまりのことに思考停止状態になりかけている魔王ですが、しかし辛うじて呼びかけることだけは出来ました。
「……大体、『黒鍵騎士』の役割は当代魔王陛下の補佐兼護衛であり、変態ロリコンの尻拭いやもふもふレンタルの為につく役職ではないのですよ。それが何ですか。気が付けばロリ美少女ブロマイドでレンタルされていたり、無様に敗北した挙げ句の景品にされていたり……。どうして私がこんな目に遭わなければならないんですかどうしてですか誰か教えて下さいよ。いい加減我慢の限界なんですよ。どうして私はこんな馬鹿に仕えているんですかああもう何もかもやってられないですね……」
ぶつぶつとキレ気味に呟き続ける黒鍵騎士です。
半目で魔王を睨みつけているその姿からは忠誠心など欠片ほども見当たらず、ひたすら憎悪だけがありました。
我慢に我慢を重ねてきた黒鍵騎士ですが、いよいよ限界が訪れたようです。
まあ、保った方ですけどね。
むしろ頑張ったぞと褒めてあげたいぐらいです。
「やってられないですね本当にもうやってられないやってられないやってられない……」
「い……いかん!!」
魔王がマジな声で焦りました。
「っ!?」
さすがにその様子に気付いた魔女がにゃんこの●●●から手を離して黒鍵騎士の方を向きます。
「ふー……ふー……!」
「こ、黒鍵騎士!?」
黒鍵騎士の瞳が紅く光っています。
正気を失いかけている顔です。
「離れろ魔女! 黒鍵騎士が暴走する!!」
魔王が魔女に飛び掛かって黒鍵騎士から引き剥がします。
「きゃっ!」
首根っこを掴まれた魔女は慌ててにゃんこも足で挟んで避難させます。
扱いは酷いですが緊急事態ということで。
「ぼ、暴走ってどういうこと!?」
「そのままの意味だ! 『黒鍵騎士』の魔王への忠誠が揺らぐと、『黒鍵』と『鎧』が安定を失うのだ! つまり暴走する!」
「そ、それって……!」
かなり不味いことになるということです。
事態は急展開で深刻になっています。
「魔王ってばついに黒鍵騎士に見放されたのね! いつかはそうなると思ってたけど! だったら私が黒鍵騎士を手に入れるチャンス!!」
「第一声がそれかーっ!!」
空気を読んでくれない魔女の台詞は魔王の心と身体に深く突き刺さるのでした。
というかキレた原因は魔女にもあると思うんですけどね。




