我慢・オブ・限界
「ん~みゅ~……」
魔女はベッドの中ですりすりしています。
一体何にすりすりしているのかというと、もちろん先日から魔女宅にホームステイするようになった黒鍵騎士の尻尾です。
まだ朝早い時間なのでまどろみの中にいますが、たとえ寝惚けていてももふもふへの執着は起きているときとまったく変わりません。
寝ても覚めてももふもふです。
きっと死んだ後も幽霊になってもふもふしているのでしょう。
「魔女殿」
「んみゅ」
「尻尾を触るのはいいのですが……」
黒鍵騎士は魔女と同じベッドで居心地悪そうに呟きます。
「当たり前のように尻を撫でるのはやめてくれませんか?」
「ん~。わかった~……」
さわさわ……
「っ!! だからって前を撫でないで下さいっ!!」
尻が駄目なら股間を……と魔女が手を移動させたところで黒鍵騎士に掴まれてしまいました。
セクハラ失敗です。
「ちぇ~……」
魔女はむくれながら今度はにゃんこに頬擦りし始めました。
右側に黒鍵騎士、左側ににゃんこ、そして真ん中に魔女という川の字状態的なベッドの上なのです。
「あ~。にゃんこのはちっちゃくて可愛いな~」
「………………」
まだおねむ状態のにゃんこの●●●を触っています。
「にゃう……」
寝惚けながらにゃんこは身体を捩ります。
どうやらくすぐったいようです。
黒鍵騎士としては色々と突っ込みどころが多いのですが、ここで余計なことを言うと自分に被害が来そうな確信があるので沈黙を守ります。
にゃんこ自身が嫌がっていないのならば止める理由もありませんしね。
両手にもふもふヘブン日和です。
そんな中、一人だけしくしくと涙する姿がありました。
「う~……」
客人なのにベッドを与えてもらえず、床の上で寝ることを強いられた養殖もふもふショタ美少年状態の魔王です。
床の上でごろごろしながら怨嗟の声を発します。
「ズルいぞ……黒鍵騎士とにゃんこだけ……」
恨み籠もった目で睨まれる黒鍵騎士は対応に困ってしまいました。
そもそもこんな事になった原因は主である魔王達が敗北した所為なのです。
自分はあくまでも被害者であって恨み言を言われる筋合いはないのです。
だからでしょう。
黒鍵騎士も色々と限界が来ていたのです。
「……陛下なんて一生床でも舐めていればいいんです」
「っ!?」
突然の暴言に硬直してしまう魔王でした。




