養殖は優先順位から外れます
超ごきげんな忍者と生きた屍と化している勇者は腕を組んで、正確には屍と化した勇者の腕にロリ化した忍者がしがみついてその場から立ち去ってしまいました。
きっとこの後あつ~い夜を過ごすことでしょう。
その後、勇者の性癖が変わったら面白いのにな~と酷い事を考える魔女でした。
トラウマになったらなお面白いとも考えています。
「うぅ……余が味わいたかった……」
魔王はまだ未練を残しているようです。
「だったらついていけばいいじゃん。勇者と一緒に可愛がってあげたら?」
魔女が爆弾発言をかましてくれました。
「嫌だーっ! 勇者と兄弟になるのは嫌だーっ!!」
「仲良さげなのに」
「それとこれとは話が別だ!!」
天敵の壁を乗り越えて親友と言ってもいいほどの仲になっている二人ですが、やはりそこには譲れない一線というものがあるようです。
主に性癖関連で。
まあ魔女にとってはどうでもいいことです。
兄弟の意味をさりげに理解しているのもどうでもいいことです。
魔女にとって重要なのは黒鍵騎士を一か月もふもふ添い寝セクハラ出来るということなのです。
「んっふっふ~。じゃあうちに行こうか~」
黒鍵騎士の腕にしがみつきながら魔女はそう言います。
「ますたぁ~。ぼくともてをつないで~」
「もちろんだよにゃんこ。両手にもっふもふ~」
もう片方の手をにゃんこと繋いでいます。
このまま転移する気満々です。
「余は!? 余ももふもふなのだぞ!」
魔王がショタ美少年もふもふ姿のまま訴えます。
さっきまで変身したロリ忍者に未練を残していたくせにもう目の前のロリ魔女にそんなことを言っているのですから最低最悪ですね。
「もふもふだけど偽物だし」
「んがっ!」
魔女が容赦なく切り捨てました。
「右手は黒鍵騎士、左手はにゃんこ。天然もふもふに両手を塞がれてるんだから養殖もふもふが優先順位から外れるのは当然の流れでしょ?」
「ひどいっ!」
さっきまでの自分の行動の方がよっぽど酷いということは完全に棚上げ状態です。
「まあどうでもいいけど。さて、転移しよっか」
「余を置いていくなーっ!」
「自分で転移できるでしょ? 後から勝手に追いかけてくればいいんだよ」
「うぐっ!」
「転移開始~」
そして魔女たちは消えてしまいました。
一人残された魔王は一時間ほど号泣したりいじけたりしながらも結局後を追いかけるのでした。




