お髭こそが我が命!
探検を続けていく内に面白いことに気が付きました。
男性のドワーフは大体が口髭をたくわえています。
サンタクロースのお髭よりも長いです。
「ますたぁ、こんどはみつあみだよ」
「うん。バリエーション豊富だねぇ」
そしてお髭はドワーフにとって一種のファッションらしく、リボンで飾ったり、三つ編みをしたり、編みこみをしたり、ツインテールにしたりと様々です。
お髭こそが自らのチャームポイントなのだと言いたげです。
ちなみに最初の老人はリボンなどで飾り付けたり結んだりはしておらず、代わりにお手入れだけに命を賭けているようなサラサラ具合でした。まるでトリートメント直後の髪の毛のようです。
お髭だけを染めているドワーフも居ました。金や赤、青や桃色など、とても鮮やかです。
極めつけは虹色お髭でしょうか。
「あれはすごかったね」
「うん。どうやって染めてるんだろうね~」
お髭を七色……染色方法が想像つきません。
歩いていくうちにワインセラーや武具の展示室なども見つけました。
「ますたぁ。あれさわってみたい」
にゃんこが格好いい剣を指さして言います。
「危ないから駄目。もうちょっと大きくなってしっかりと扱えるようになったら専用の武器を創ってあげるから我慢しなさい」
「ほんと?」
「ほんと」
「じゃあおおきくなったらますたぁをまもってあげるねっ!」
「生意気だぞ、こいつぅ!」
健気なことを言ってくれるにゃんこの頭をぐりぐりと撫でながら魔女はご機嫌でした。
魔女はにゃんこが大好きです。
にゃんこも魔女が大好きです。
こうやってお互いの気持ちを確認するのはくすぐったくもあり、嬉しくもあります。
武具を創っている鍛冶場も見学しましたが、すぐに熱気にやられて出て行きました。
「あついね……」
「あついよぅ」
汗ダラダラです。
お風呂が恋しいと切実に思いました。
「温泉ならありますよ」
虹色髭のドワーフが教えてくれました。
「なんと!」
「おんせんってなに?」
「火山のそばですからね。上質な温泉があります。よかったら浸かっていきますか?」
虹色髭ドワーフの提案に、魔女は一も二もなく頷きました。
日本人にとって温泉は天国です。
ヘヴンです。
異世界に来てまで温泉に浸かれるなんて思ってもいませんでした。
「温泉らぶーっ!」
魔女とにゃんこは大はしゃぎで温泉へと向かうのでした。




