条件付きチート
「もふもふもふもふもふもふ!!」
北●神拳の必殺スキル『ほあたたたたたた!』の如く、魔女は魔王へと攻撃を加えていきます。
拳、拳、拳、ひたすら拳の攻撃のみです。
防御力の高い魔王がバリアジ●ケット……ではなく魔力強化防具の防御力を易々と突き破ってダメージを与えてきます。
「もふぅっ!」
「うっ! こ、これほどとは! もふもふマニア恐るべし! ぐはっ!」
最後のアッパーカットが見事に決まり、魔王は文字通り吹っ飛ばされてしまいました。
敗者確定の魔王を確認してから魔女はニヒルに笑います。
「もふもふもう、もふもふもふ」
『お前はもう、●んでいる』的な決め台詞なのかもしれません。
魔王の身体が爆散しないか心配です。
「うぅ……」
そんな魔王を見て勇者が恐怖にかられます。
魔王と勇者の実力はほぼ互角です。
そんな魔王を特殊暴走モードとは言えあっさりと下してしまった魔女はどこまでも規格外です。
元々の能力は平均よりも少し上というだけの筈なのですが、如何せん外部供給される力の扱いが巧すぎます。
条件付きの極悪チート仕様といったところでしょう。
限界を無視した身体強化は戦闘終了後の魔女に大きな負担を与えてくることは明白ですが、しかし魔女ならばその対策すらしていそうなのが恐ろしいですね。
「ど、どうするか……」
勇者は焦りながら魔女を注視します。
少しでも隙を見せればすぐさま攻撃されることが分かっているからです。
といっても魔王を下された以上、勇者も同じ運命を辿ることは必然です。
この勝負はあっさりと逆転されたと言っていいでしょう。
ならば降参するという手もあります。
食われるのはご免ですが、しかし力ずくで行けば自分が攻めを維持できるのですから実際のところそこまで深刻な問題ではありません。
あの時は恐怖と焦りで混乱していましたが、お互いの力量差を考えると十分に対処可能な事態です。
ならば降参という選択肢はアリなのですが、しかし今の魔女に降参の意思表示が伝わるかどうか、それが問題です。
というより言葉が通じる状態なのかどうかも怪しいですし。
もふもふしか言ってくれないので正気かどうかも分かりません。
狂気であることは確定なのですが。
「ん? もふもふ?」
勇者ははっとして一つの名案を思いつきます。
敗北することは確定ですが、自分の安全を確保できそうな策を思いついたのです。




