その油断は……
「うぐぐ……」
「ま、まだまだ……」
焦げ焦げのビリビリにされてしまった魔王と勇者は辛うじてまだ立っています。
戦意も削がれていません。
魔王は持ち前の頑丈さで、勇者はチートの回復能力で戦況を覆そうと粘っているところです。
「うわ~。さすが世界最強コンビ。これでも駄目となるとあとはもう闇魔法ぐらいしかないかもね~」
魔女が二人の頑丈さと回復能力に呆れ返っています。
自分が世界最強コンビを圧倒してしまった事実などどうでもいいかのような態度です。
まあ実際魔女の目的は黒鍵騎士一ヶ月もふもふレンタルなのであって、魔王と勇者に勝利することではないので当たり前の反応かもしれませんが。
魔王と勇者に勝利することはあくまでも過程であって目的ではありません。
「にゃんこ、君のご主人様はある意味とんでもないっすね……」
そんな魔女の態度に少々ドン引きしている忍者でした。
凄く強いということは理解しているのですが、モチベーションの上がり方が通常とずれすぎていているのが玉に瑕というべきか。
「そんなことないよ。ますたぁはもふもふのためにぜんりょくをつくすまっすぐでかっこいいひとだよ」
「………………」
ますたぁ至上主義のにゃんこには何を言っても無駄なようです。
保護結界から抜け出した二人は魔王と勇者の反撃に備えます。
魔女ばかりに頼るわけにはいきません。
魔女はあくまでも後方支援の火力特化型であり、前衛は自分たちの役割なのです。
魔女に二人を近づけず、再びトドメの大規模攻撃を準備してくれるまで時間を稼ぐ必要があります。
「忍者道具そのいち、煙幕弾!」
忍者は懐から取り出した煙幕弾を魔王と勇者に投げつけます。
ぼふん、と破裂したそれは、煙を出しながら視界を塞いでくれました。
「仕掛けるっすよ!」
「らじゃー!」
忍者とにゃんこは奇襲を仕掛けるべく動きます。
魔女があまりにもあっさりとダメージを与えてくれたのでこのあたりは気が緩んでいたとしか言い様がないでしょう。
忘れているかもしれませんが相手は魔王と勇者です。
世界最強コンビなのです。
簡単に勝利を拾えるほど甘い相手ではないのです。




