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召喚理由はカレー肉、みたいな?

 少女は薄暗い部屋で目を醒ましました。

 足元には魔法陣があります。

「ええと……」

 少女はきょろきょろと辺りを見渡しますが、やはり見覚えはありません。ログハウス風のお家、ちょっとファンタジー入ってる、みたいな感じです。


「ひーっひっひ。よく来たねえ、異世界の小娘」

「ほえ?」

 よく見ると少女のすぐ側に老婆が立っていました。

 老婆は黒いローブを身に纏って杖を持っています。黒い帽子までかぶっているところを見ると、まんま魔女のようです。


「ええと? 異世界?」

「ひーっひっひっひ。そうさ。ここは異世界。お前さんはワシに召喚されたのさ」

 魔女は笑います。とても邪悪そうに。とても楽しそうに。少女の戸惑いが楽しくてたまらないとでも言いたげです。きっとこの魔女はドSなのでしょう。

「異世界召喚かぁ。なんだかマンガみたいな話だなぁ」

 少女の方はぼんやりと辺りを見渡しています。異世界の視界がちょっと不思議なのでしょう。

「ところで魔女さんはどうして私を召喚したのかな?」

「ひーっひっひっひ。それはお前さんを餌にするためさ!」

「えさ?」

 勇者になってくれでも、魔王になってくれでもなく、餌になれと言われました。異世界召喚としてはかなり異例な展開でしょう。儀式の生贄になれと言われた方がまだマシな気がしてきます。

「ひひひ。ほら、あれを見てごらん」

 魔女は少し離れた位置にある大きな釜を指さします。

 炎でグツグツと煮込まれている中身からはとても美味しそうな匂いがします。

「美味しそうな匂いがするね」

 少女は素直な感想を漏らしました。

「ひっひっひ。そうじゃろうそうじゃろう。お前さんはあの中に入るのさ」

「ほえ?」

 再び首を傾げます。

「ワシはこの世界の食材は大抵食べ尽くしておってな。ちょっと珍しいものを食べてみたいと思ったのじゃよ」

「珍しいものって?」

「たとえば、異世界人の肉とか」

「………………」

 正真正銘餌でした。

 餌どころか具でした。

 カレーに入れる肉的扱いでした。

 冗談じゃありません。

 どうして自分がカレー肉にならないといけないのでしょう。

 理不尽です。

 不愉快です。

「さあ。自分の状況を理解したらさっさとあの中に入るんだよ。ひひひ。若いおなごの肉は久し振りじゃのう。楽しみじゃ楽しみじゃ」

「あんたが入れ!」

「ほぎゃっ!?」

 少女はすばやく魔女の杖を奪い取ってからそのままフルスイングしました。

 ホームランです。

 もしくはホールインワンです。

 予想以上に軽かった魔女の身体はそのまま釜の中へと入ってしまいました。


 こうして少女は魔女の餌にならずにすみました。

 カレー肉の運命は回避されたのです。

 めでたしめでたし?


「あ、しまった。帰る方法が分からないぞ?」

 少女はやってしまってから気付きました。

 ここは魔女を痛め付けて脅迫して拷問して帰還方法を吐き出させるのが正しい選択肢でした。

 ……こうして少女は一人、異世界に取り残されてしまったのです。


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