尻尾り蜜月?
「つーか世界最強二人組タッグってそっちが極悪チート仕様すぎるじゃんか! 不公平だよ却下却下! というか私を巻き込まないでよ!」
「……初対面で人のケツを焦がしたり、勇者を半殺しにしたりした奴の台詞とは思えないな。余から見れば魔女の方が世界最強極悪チートという感じだぞ」
不平不満をぶちまける魔女に対して、魔王がしみじみと反論します。
「失礼な。私はそこまで極悪じゃないもん」
あの時はあくまでも魔女のテリトリーだったから、という補足説明がいるようです。
今回はルナソールに蓄積魔力があるとはいえ、やはり勇者と魔王を二人相手取るのは難しいと考えざるを得ません。
いくら忍者とタッグを組んだところで勇者一人に及ばないレベルでは助けになるとも思えません。
「ではこうしないか? 魔女が勝利したら黒鍵騎士を一か月レンタルしてやろう」
「一か月っ!?」
「そう、一か月だ。魔女の家に一か月。煮るなり焼くなりもふもふするなりサクランボを開発するなり好きにするといい」
「ぐはっ!」
魔女の口元からじゅるりとよだれが垂れました。
右手ににゃんこ。
左手に黒鍵騎士。
もふもふ天国魔女の家。
的なドリームが魔女の脳内で暴走中です。
その生活が一か月。
一か月もあればあんなことやこんなことも出来ます。
「ほ、ほんとに?」
魔女が魔王に詰め寄ってから言います。
その表情は既に黒鍵騎士が自分のものになったかのような皮算用スマイルです。
「ああ本当だ。一ヶ月間だが黒鍵騎士を貸し出してやろう」
「はあはあはあはあ」
「……まずはよだれと鼻息をどうにかしようか」
「うあ」
ふきふきと口元を拭う魔女ですが、鼻息まではまだ抑えきれません。
鼻血が出ないだけまだ自制心が勝っていると判断しましょう。
「……でも肝心なことを訊いていない」
「ふむ?」
「私たちが勝ったら勇者はつるぺた忍者とベッドイン、そして私は黒鍵騎士と尻尾りもふもふ蜜月ってことでいいんだよね?」
「その通りだ」
「つるぺた忍者言わないでほしいっす!」
魔女の背後から忍者が喚きます。
「じゃあ魔王達が勝ったらどうするの?」
そう。
メリットは非常に魅力的ですが、デメリットを確認しておかないことには軽々しく返事をするわけにもいかないのです。




