黒のレースはまだ早い
「ううう。酷い目に遭ったぞ」
股間を撫でさすりながら魔王が涙目で言います。
股間を撫でさすらないでください。
ちなみに魔王スキルですでに暴れん棒将軍は回復済みです。
しかしショックはまだ抜けていません。
「ちっ!」
回復を確認した魔女が忌々しげに舌打ちしました。
二度と使い物にならなくなればいいのにと本気で思っているようです。
「ロリコンなんて世界から絶滅すればいいのに」
「そこまで言うか……」
恨みを込めて呟かれた魔女の言葉に、さすがの魔王も凹んでしまいます。
「つーか何しに来たんだよ」
勇者もさすがにこの状況では庇えないらしく、冷たい視線を魔王に向けています。
「うむ。魔女に黒鍵騎士の耳尻尾もふもふ禁断症状があるのなら、余にも魔女のつるぺたロリハリボディを揉みしだく禁断症状があってもいいと思ってな! ちょっと演出してみたのだ!」
「死ねーっ!!」
冷めかけた怒りが復活した魔女は魔王にハイキックを食らわせました。
魔王は宙を舞って地面へと落下します。
その際、
「……黒のレースはまだ早いと思うぞ」
と、スカートの中身を言い当てられてしまいました。
マジで一回ぐらい死んだ方がいいですねこのおっさんは。
それにしても今日は屋根の上から落下する人が多い一日です。
まあ突き落としているのは主に魔女なのですが。
「で、勝負がどうとか言っていたな」
魔王の回復能力は既にアンデッドの域に達しています。
屋根上から地上の石畳に頭から落下されても五秒で回復してしまいました。
今度は不死身属性の攻略法を研究しようと密かに決める魔女でした。
魔王をぶっ殺して黒鍵騎士を奪い取る気満々なのか、それとも脅迫材料に使う気なのか、どちらにしろロクなことにはならない予感がしますね。
「まあね。勇者と弟子忍者だと分が悪いから何か公平なルールにならないかなーと思ってさー」
「公平といっても難しいよね。お互い得手不得手があるわけだし」
「それもそうだな」
「魔王は何かいいルール思いつかない?」
「……随分とその忍者に肩入れするではないか。もしかしてそういう趣味なのか?」
「死ねばいいのに」
「………………」
口癖になりつつありますね、これ。
魔女にはヤンデレ属性もあるかもしれません。




