丸薬一つで数日を耐え抜く者
「内容を変えるって言われても、何にするんだ?」
身体能力では絶対に勝てないので、身体を動かす勝負は論外です。
しかしオツムにあまり自信がない勇者にとって、頭脳勝負も避けたいところです。
双方のバランスを取れるようにしようと思ったら、やはりアイディアに行き詰まってしまいます。
「大食い競争とか?」
これならば身体能力は関係ありません。
「無理っす。おれは小食なんっす」
「そうなの?」
「そうっす。忍者とは丸薬一つで何日も耐え抜くものと師匠に教えられたっす。それ以来少ない食事でどれだけ耐えられるかの訓練をしていたらすっかり胃袋が小さくなってしまったっす」
「……あんた何吹き込んでるのよ」
呆れ混じりに勇者を睨みつける魔女でした。
「いやだって忍者ってそういうものじゃね?」
「確かにそういうものっぽいけどさ」
余計な入れ知恵のお陰で勝負が成り立ちませんでした。
「じゃあ絶食勝負?」
「うあー。モチベーション下がる~。俺一日五食ないと耐えられないし」
「食い過ぎだと思う」
それだけカロリー消費が激しいのでしょうが、その消費が何に変換されているのかが疑問です。
「さうなは?」
にゃんこが新しい案を出してくれました。
「サウナ?」
「うん。さうなにどっちがながくはいっていられるかしょーぶ!」
「悪くないとは思うけど、どう?」
魔女は勇者達に問いかけます。
「俺サウナ苦手。すぐのぼせる」
「同感っす。温泉に入ってもすぐのぼせるのにサウナとかマジありえねーっす」
「………………」
もう見捨てて帰っちゃおうかなとマジで考えてしまう魔女でした。
あとは二人で好き勝手やっちゃって、みたいな。
「にゃんこ、帰ろっか」
「かえる?」
「わー! 見捨てるな!」
「そうっすよ! もっとかまってほしいっす!」
「………………」
この二人マジうぜえ、とか考えてしまったことは内緒です。
「っ!?」
その時、魔女の背後に妙な気配がしました。
「にゃ?」
にゃんこが振り向いたその先には……




