地下都市へゴー!
魔女の箒が空を駆け抜けます。
「うわぁ! すごーい! たかーいっ!」
魔女の背にしがみついたにゃんこは興奮気味にはしゃぎます。
「あんまり騒ぐと落ちるよ」
「おちないもん。ますたぁにしっかりくっついてるもん!」
ぎゅっと抱きついてくるにゃんこの体温が、とても心地よいものに感じます。
にゃんこと魔女を乗せた箒は三時間ほど空を駆けてから目的地へと到着します。
フリューガ火山。
今でも活動を続けている活火山です。
週に一度は噴火しているので、近隣に人間は住んでいません。
住むことが出来ないのです。
そして白銀龍の情報によると、この火山の地下にドワーフの村があるようなのです。
「うーん。でも入り口が分からないぞ?」
噴火はしていませんがマグマが覗く火口を目にしながら、魔女は首を傾げます。
火口の熱気が頬を撫でます。
そろそろ汗が出てきそうです。
「ますたぁ。あっちからへんなまりょくをかんじるよ?」
「変な魔力?」
魔女はにゃんこが指を差した方向に視線を向けます。
すると確かに妙な魔力を感じるのでした。
その場所に向かうと、四方にくぼんだ石畳がありました。
「なーるほど。物理ゲートじゃなくて魔法ゲートなわけか」
地下都市への入り口は階段や落とし穴などではなく、転移魔法陣による移動なのでした。
魔力を持つ者だけが視認することのできる魔法陣を起動させて、魔女とにゃんこは地下都市へと侵入します。
転移の衝撃に慣れていないにゃんこはぎゅっと魔女に抱きついています。
にゃんこを抱き締めた魔女は地下都市へと足を踏み入れました。
立っているのは転移魔法陣の上です。
魔法の灯りに照らされた薄暗い部屋でした。
「都市っていうより、遺跡みたいなイメージだなぁ」
一番近いイメージはエルトリア人の古代地下都市でしょうか。
歪にくりぬかれた洞窟内部は都市のような整然さはなくとも、機能美には満ちています。
工房が寄り集まった職人都市、という表現が一番近いような気がします。
「ちょっと目に楽しい光景だね、これは♪」
「ますたぁ、てんじょうおちてこない?」
「落ちてこない落ちてこない。結界で護られてるみたいだからね。その辺りは大丈夫」
「よかったぁ」
こんな地下都市だと地震一つで崩れてしまいそうなイメージがありますが、よくよく調べてみると都市全体に結界魔法がかけられているようです。
効果は重力遮断と衝撃遮断。地震と過重による自壊を防ぐための処置ですね。
大魔法の一種ですが、それが都市全体を隈なく覆っていることに魔女は感心します。
「誰がかけたのかは知らないけど大したものだね」
魔女は転移魔法陣のある玄室からにゃんこを連れて出ます。
すると髭を蓄えた小さな老人が待ち構えていました。
「ようこそお客人。我らドワーフの地下都市へ」
老人はぺこりと頭を下げてくれました。
どうやらそれなりに歓迎されているようです。




