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貧チチ言うな

「うん。確かに女だったね。ついてなかった」

 にぎにぎと右手を動かす魔女に忍者が悲鳴を上げました。

「なななな……何もあんな方法で確認することないっしょーっ!?」

 可哀想に、涙目です。

「ん? 上の方がよかった? おっぱいもみもみ希望?」

「のーっ!!」

 さっと胸元を隠す忍者でした。

 そして勇者が止めを刺します。

「あー、それはお勧めしない。多分、揉んだところで判断できない」

「師匠酷いっす!!」

「つるぺたってこと?」

「そりゃあもう断崖絶壁つるぺた平野ってぐらいに」

「うわああああんっ!!」

 ついには泣きだしてしまう忍者でした。

「だからいくら忍者が女でも一晩付き合う気にはなれないわけさ。だって俺おっぱいでかい女が好みだもん。こんな断崖絶壁じゃあ揉むことも出来やしない」

「……あんたそれ最低野郎の台詞だね」

 魔女がじとーっとした視線を勇者に向けます。

 自分もまだぺったん胸なので思うところがあるようです。

 しかしまだまだ成長の余地が残されている魔女とは違い、明らかに育ちきっている忍者にとっては絶望的な状況でしょう。

 世の中の貧乳ファンを悉く敵に回す勇者の台詞は、同時に忍者の心をも傷つけているのです。

「うー、うー、おれだって好きで貧チチじゃないのにー……」

「貧チチ言うな」

 いじいじといじける忍者は瓦屋根にのの字を描き始めています。

「だーかーらー! 俺に勝ったら一晩付き合ってやるって言ってるじゃん」

「うあーん! 勝てないもん勝てないもん今のままじゃ絶対勝てないもん!」

 師匠と呼ぶだけあって実力差は自覚しているようです。

「そりゃあ無理だな。あっはっは」

 薄情者な勇者はあっけらかんと笑っています。

「まあ勇者に勝負を挑むあたり無謀かもね。戦闘能力だけならウルトラチートだし」

 魔女も同意見だというように頷いています。

「ででででも、魔女さんは師匠をぶっ飛ばしてたっすよね?」

「あー、うん。条件が整えばフィールド次第では勇者よりも私の方が強いかな? 少なくとも私の家でやり合えば負けない自信はある」

「やめやめー! 思い出させるなーっ!」

 初めて出会った時のことを思い出して身震いする勇者です。

 初対面の相手に対していきなり殲滅魔法をぶちかましてくれる魔女のぶっ飛び具合は今思い出しても恐怖バリバリなのです。

「す、すごいっす! 師匠二号と呼ばせてくださいっす!」

「嫌じゃーっ!」

 二号とか言われるとなんだか愛人みたいでアレですね。



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