欲望……じゃなくて
「……ふう。初めて植物な気分を味わったぜ」
勇者がようやく地面から身体を抜いて屋根上に戻って来ました。
頭からダラダラと血が流れていますが、持ち前の回復力でもうじき止まりそうです。
「どうせなら私も一緒に落ちてあの状態で電気あんまとか喰らわせればよかったかな」
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ! そういうのは魔王にやってくれ! あいつなら絶対喜ぶから!」
「……喜ばれるのもなぁ」
ドSな魔女にとっては喜ばれるよりも絶叫される方がお好みなようです。
どんだけだよ! とか突っ込まないように。
「じゃあ黒鍵騎士は? あいつは嫌がりながら悶えてかなりいい表情を見せてくれると思うが」
「……じゅるり」
魔女の表情がやばいものになりました。
近々黒鍵騎士の●●が大ピンチかもしれません。
「……俺も人のことは言えないけどさ、魔女のやばさは日を追うにつれてエスカレートしていってるよな」
勇者が若干ドン引きしているようです。
「異世界に来てまで自分を殺しても仕方ないじゃん。欲望……じゃなくてやりたいことに忠実に生きた方が得だと思うし」
「ますたぁ、いまよくぼうってゆった」
にゃんこもちょこっと引いています。
「ちゃんと言い直したもん」
「いいなおしたらもんだいないの?」
「ないない。のーぷろぶれむ」
「そっか~。じゃあのぉぷろぶれむなんだね!」
にゃんこの洗脳が完了しました。
にゃんこは魔女に忠実がデフォルトなので洗脳はとても簡単なのです。
エロ方面の教育をしたらきっとエロショタにゃんこが出来上がります。
「仲良し主従って感じっすね」
「まあ主人と使い魔だからな」
すっかり忘れ去られた忍者が切なそうに呟きました。
「師匠から一本取ったらおれもあれぐらい仲良くなれるっすかね?」
「……さあな」
あのレベルの仲良しは難しいかもしれないと勇者は思うのでした。
というか魔女とにゃんこの仲良し度は勇者の目から見ても異常ですし。
一般的な主従関係というのはやっぱり魔王と黒鍵騎士のようにある程度一線を引いたものだろうというのが勇者の認識です。
師弟関係もそれと大差ないでしょう。
「ん? 忍者は勇者と仲良くなりたいの?」
そんな会話に気付いた魔女が忍者へと質問しました。
「その通りっす。師匠から一本取れたら一晩付き合ってくれる約束をしてるっすよ!」
と、魔女の質問に忍者が爆弾発言をかましてくれました。




