もがーっ!
「いや~。師匠にはまだまだ敵わないっすね!」
戻って来た忍者は敗北したにもかかわらず清々しい笑顔を浮かべていました。
「ふっ。俺に勝とうなんざ五百年早いわ」
えっへんと胸を張る勇者でした。
「五百年ってまた微妙な数字を……」
百年よりは長いですが、どうして五倍である必要があるのかが理解不能です。
勇者には勇者なりのこだわりがあるのかもしれません。
「それと師匠のお友達っすね。初めまして。おれは忍者っす」
「初めまして。私は魔女だよ」
「ぼくはにゃんこだよ~」
お互いに自己紹介を始めます。
「それよりもどうしてこんな奴の弟子になってるの? 人生の選択肢間違えてない?」
魔女が素朴な疑問を忍者にぶつけます。
「こらーっ! 失礼なこと言うなよ!」
そして勇者が怒ります。
「いやあ。そんなことはないっすよ。師匠は素晴らしいっす」
「うんうん」
どうやら勇者を信奉しているらしい忍者はキラキラした眼で勇者をたたえます。
「素晴らしいかなぁ……」
じとーっとした眼で勇者を見る魔女です。
「勇者のくせに魔族のお姉さん達に筆おろ……もがもがっ!」
「バラすなっ!」
自分の初めて事情をバラされそうになって勇者が慌てて魔女の口を塞ぎます。
後ろから羽交い締めにして塞いでいます。
「もがーっ!」
「ぐはあっ!」
そして魔女の肘鉄が勇者の鳩尾に炸裂しました。
もちろん魔力を籠めた攻撃です。
「あ、ゆうしゃおちた……」
そして屋根の上で会話をしていたので真っ逆さまに地上ダイブしてしまったのです。
「きゃーっ!」
「人が! 人が落ちてきたぞ!!」
「い、生きてるか!?」
「いや死んでるだろ! 頭が地面にめり込んでるぞ!」
……勇者は頭から地面に落っこちてしまっただけではなく、地面に頭部を丸々めり込ませていました。
首から下が逆さまに地面から生えてきているような有様です。
「す、すごいっすね! あの師匠を一撃で!」
そして忍者の魔女を見る眼差しが尊敬に満ち溢れているのでした。




